基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

あなたの魂に安らぎあれ

あなたの魂に安らぎあれ (ハヤカワ文庫JA)

あなたの魂に安らぎあれ (ハヤカワ文庫JA)

 人の形のごときものは
 万化してきわまりなし
   ──荘子大宗師編

 神林長平という作家の代表シリーズは「敵は海賊」と「戦闘妖精雪風」ですが、それよりも知名度的に劣りながらも圧倒的な世界観を構築しているのがこの「火星三部作」です。本書は火星三部作の第一部、おまけに神林長平の初長編という、なかなか記念碑的作品。ちなみにぼくは火星三部作が、というよりかは、「膚の下」が間違いなく一番の傑作だと思っておりその観点からしても本書は重要な一冊です。しかし、本書がどのようにして傑作足り得ていて、そしてどのような面白さを持っているかみたいな答えを見つけるのはこれ、ぼくには荷が重いですなあ。本書が凄く面白いのは、言うまでもないことなのですが。

 先程までここに、何故凄く面白いことをうまく伝えられないのか、ということを書いていたのですがそんなこと読ませられても困るだろうと思ったので消してしまいました。違うことを書きます。本書のテーマをあげるとするならば、シンプルに「人はなぜ生まれてきたのか」に尽きるでしょうか。いや、一つに絞る必要もないか。「人は何故創造するのか」や「人は何故…」と問い続けていくのが、この三部作の…というよりかは、神林長平作品の根源的欲求といっていいかもしれません。特に本書でも、のちに「膚の下」で執拗に繰り返される「創造」のテーマは重要です。アンドロイドと、それを作りだした人間との対比として。人はいつだって少しでもいいものを作ろう、という衝動に支配されているような気がします。しかし、よすぎるものを作ってしまったらどうするのか。自分たちより性能のいいアンドロイドを作ってしまったら、あとは自分たちに残ったやることなんて、この凄い性能のいいアンドロイドを作ったのは俺達人間だ、という自慢ぐらいでしょう。なんかそれは凄く悲しい。

 ぼくらが生きている意味、というのは、仮に創造主が居た場合には明らかになるでしょう。「これこれこういう意味だよ〜ん」とすぐに教えてくれます、きっと目の前にいたら。しかしそれを知るのは、いいことなのかといったら、それはどうなんでしょう。みんな、突然そんなこと言われても困るわ―…と思うんじゃないでしょうか。思うだけだったらいいのだけど、実際指定されたことしか生涯出来ない、となったらそれはもう正真正銘の地獄です。決められたことだけをやる存在は「創造」とはかけ離れているからそんな風に感じるのかな―とも思います。つまり人間とは「創造」する動物だとぼくが考えているからそう思うわけだと思うのですが。決められた、わかりきったことだけをやるのはそれは「製造」ですよね。そこから考えると創造とは「何が出来るかわからないものを作ること」かなーと思います。まあなにはともあれ、いきている意味はだれかから与えられるものだったとしても、そんなの与えられたら人生は超絶つまんなくなる(人間は創造する生き物で製造する生き物じゃないから)んだから、人生の意味なんて自分で自分に与えればいーじゃん、与えられなくてもとりあえず生き続ければいーじゃん、ってのが、ぼくがこの火星三部作から受け取ったメッセージなんですけどね。終わります。ぐだぐだですけど、ほんとに何を書いたらいいのかわからないんだもの。