基本読書

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アストロモモンガ

アストロモモンガ (河出文庫)

アストロモモンガ (河出文庫)

 粘着質な人間だなあ、と思いながら橋本治の本を読んでいるけれど、これは際立ってて笑ってしまった。まあ当然最初の疑問は「アストロモモンガっていったいなんなんじゃい」ってことだ。アストロなんて聞いてもドラクエアストロン(自分の体を鋼鉄にしてダメージを食らわなくする魔法)しか思い浮かばないし、モモンガっていったらあのモモンガだろう。それがどしたん、というところ。で、簡単に説明するとアストロモモンガは地図にも載ることのない秘境、中国安南省の奥地に古くから伝わる星の神秘の密事なのです。

 ぜんぜんわからないでしょうけど、まあ身も蓋もないことを言ってしまえば橋本治が作りだした架空の星占いみたいなものです。アストロモモンガによると人類の歴史は暇をもてあました女神が麻雀を発明して、サイコロを振ったことによって始まったのだそうです。なんのこっちゃって感じですよな。まったくです。アストロモモンガでは一年をやはり十二で割るんですが、この単位を1ももんがと呼びます。まあそれはどうでもいいんですが、この十二を星座に割り振って88年から99年まで、十二星座の運勢を書いていくのが本書のおもなあらすじになります。

 当然うお座とかひよった星座名は出てこないので、雄鼠座とか天馬座とかそんなんばっかりです。単純に一年につき一星座の運勢を書くんだったら、それでも大変ですけどあまり大したことはない。しかし橋本治が異常なのは、一つの星座につきちゃんと一月ごとの運勢も書いているところです。一年十二星座の運勢を書き、さらに一月ごとの運勢を書き、それを88年から99年まで…。端的に申し上げて、気がくるっているといっていいでしょう。実際本文も、読んでいて気が狂いそうになってきます。たとえば雄鼠座88年の運勢はこんな感じです。

 今年の雄鼠座はべつにいいことがありません。誕生日をすぎたら一年中寝ているべきです。それができないひとは強制入院です。こういう運勢が一九九九年までズーッと続きます。観念しましょう。それがいやならこの本を捨ててしまうことです。寝ればカイロに日は落ちます。金運は誕生日前までに稼げなかったらなし。恋愛運は、誕生日前までに恋人が見つからなかったら、十二年間ありません。見つかったら、平穏です。うそだと思うでしょう? うそなんかじゃありません。本当です。

 惜しむらくは発行がもう二十年前で現在とは程遠いということでしょうか。ぜひとも現代版アストロモモンガを書いてもらいたいところです。絶対に売れないでしょうけど。いやーしかしなんでこんなことやっちゃうかなー。手間ばっかりかかって大変でしょうがないと思うんですけど。そこが好きなんですけどね。