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効率的なインプット&魅力的なアウトプット指南──博覧強記の仕事術

博覧強記の仕事術

博覧強記の仕事術

唐沢俊一『博覧強記の仕事術』は文章や情報を生業にしている人は全員読むべき──日の丸海賊団を読んで面白そうだったので読んだ。内容的にはどうでもいいやろ、という部分やそれはどうかなぁーという部分も多々あったが、しかし本書は「唐沢俊一の」仕事術なので、そのあたりに文句を言うのは筋違いである上に、そういう部分を勘定に入れてもなお非常に面白い一冊であった。以下略

博覧強記の意味

 本の題名にも入っている「博覧強記」の意味とは、大辞泉で引くと「広く書物を読み、いろいろな事をよく記憶していること」」と書いてある。「博覧」とは博覧会などの博覧であり、つまりは「広い」ことを現しており、「強記」とは「記憶」をさしている。「博覧強記」とは「広く記憶していること」なのだ。そしてなぜ「博覧強記」が唐沢俊一のような物書きの仕事に役に立つのか? といえば、今なお日本映画の最高峰とされる黒澤明のセリフに象徴されているように思う。そのセリフとは『創造力とは記憶力だ』というもので、考えてみればわかることだが何かを創造するということは現代にあっては「何かをコピーしてつなぎ合わせる」こととほぼ同義である。ワンピースの作者である尾田栄一郎も、ワンピースを書く上にあたっては「今まで自分が読んできた少年漫画で面白かった事を全部やる」と言いきっている。つまりそれは記憶力のたまものなのだ。もちろんつなぎ合わせることによってそこにはオリジナリティ、創造の力が働く。しかしもとはと言えば、記憶力、今まで何を見てきたのかが重要なわけである。そこで重要になってくるのが「博覧」のもう一つの意味である。さっきは「広い」とだけ言ったが、博覧会は広く集めるほかにも「一般に公開する」役目もある。知識を強記…記憶するだけではなく、「広く一般に公開する」ことこそが、博覧強記の真の意味というわけである。
唐沢俊一検証ブログによると博覧強記には「一般に公開する」役目はないそうである。

 と、ここまでが「はじめに」の内容。ぶっちゃけここまでが一番面白く、ここから後は唐沢俊一の仕事術に入って行くので別にそんなに面白くはない。同じ本を繰り返し読めとか、付箋はるなとか、トイレで本を読めとか、うんうんとは思うものの別にそれ以上先には進まない。ありきたりな自己啓発書的存在であるが、この本が面白いのは実はありきたりな自己啓発書に見せかけて「支離滅裂な自己啓発書」なところだったりする。正直言ってこの本の内容、というか唐沢氏の仕事術はあっちへいったりこっちへいったりでまったくもってまとめあげられるようなものではない。読書論を展開したかと思えば時間の使い方を説明し、付箋を貼るな線を引くなと言うかと思ったら線を引きたいと思った本と出会えたら線を引けという。愚作・駄作を読むと視野が広がるから「このミステリーがすごい」なんて読むなと言いながら巻末にはオススメ本が30冊並べられている。このことはぼくたちに非常に重要なことを教えてくれるだろう。つまり、「一貫した方針なんて邪魔だ」ということである。付箋を貼ってはならない! という考えに固執することはその考えに支配されることであるし、愚策駄作を読むと視野が広がるから「このミステリーがすごい」なんか読むなという考えに固執することも支配されていることである。

 なんにだって、たった一つの答えなんてものは存在しないのだという大切なことをこの本は教えてくれる。さっき言っていたことをそのすぐ後に自分自身で否定することによって。人それぞれ、道は違うのだから「これだ!」という正解なんて存在しない。時には方針を捨て去ることも重要である、という重要なことを教えてくれたのだ。いや、これは別に馬鹿にしているとかではなく、マジな話である。非常に面白かった。