- 作者: 水上悟志
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2007/05/28
- メディア: コミック
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ゲーム的なシステム
とてもゲーム的な世界観…というよりかは、ゲームのシステムを漫画に持ち込んでいるところが特異だな、と思いました。たとえば掌握領域が、ひとりだけでは敵にダメージを与えられないのに二人以上の掌握領域を重ね合わせるとダメージが通るようになるとか。東雲半月さんの「技術」が、何の違和感もなく「継承」されているところとか。三日月くんの行動も彼なりの論理に従っているとはいっても完全にゲーム中のバグキャラというかなんというか。あとはやはりメインヒロインが「魔王」と呼称されるところも。「魔王」っていう単語、知名度に反してあんまり使う機会はないというか、基本的にゲームでしか目にしない単語だと思います。敵のボスがとっとと弱い主人公たちをぼっこぼこにしにくればいいのにこないところとかもドラクエチック。そしてやっぱり昨日とかに全体の違和感といったのも、複雑なキャラクターの立ち位置の構図にほとんどの違和感があるので、一言でここに違和感がある! というのはやはりおかしな話でした。
さらにいえば、漫画の主人公というのは基本的には一度たりとも死ねないわけです。ドラゴンボールとかいう例外もありますけれども、まあそれは置いといて。それがゲームという媒体だと楽に殺せる。殺してもGAMEOVERと出るだけで、何度でも最初からやり直しが可能です。批評的な意味を抜きにすればノベルゲームの利点は、どんだけ絶望的な状況に主人公を追いこんでもオッケーオッケーというところでしょうか。たとえばFate/stay night という作品では、主人公が凶悪な敵と戦いまくるわけですけれども、主人公は最弱の最弱であって勝てない。挑んだら十中八九殺されるわけです。で、そういう状況があった時に、漫画であると「ピンチ!」「でもギリギリ運が良かったり頭を使ったりして乗り越えたよ! やったね!」という繰り返しになっちゃって、下手したら途中から白けちゃうんじゃないかなーと思うんですね。その点ゲームであったら、「ピンチ!」「こっちだーうおーおりゃー!」「ざんねん! 死んでしまった!」というのを簡単にできる。プレイヤーはもっかい戻ってやり直して、正しい選択を選んで先に進むわけですが、その過程の中には絶対に勝てない相手に挑んだらそりゃ、負けちゃうよね! っていう常識に対するリアリティがありますよね。
この作品のゲーム的なとこっていうのは、やっぱり「何度もこのゲームを繰り返してきて、敗北してきた」というところにもあるわけですよ。そういう事実がある以上、読む方としてはひょっとしたら、これは主人公全滅エンドもあり得るのではないかと想像してしまうし、もしそうなったらまた新しいメンツで始まるのかどうなのかとか──って、そういうのが楽しいですね。あとどんどん死んでいくのが素晴らしいと思います。そりゃ死ぬよね。死ぬのか? あの作品に近いと思いました、なんだっけ、寄生獣だ。あれは名作だった。簡単に人が死ぬので、表紙を下手に一人でかざったりなんかすると死亡フラグがたっているんじゃないかと思って怖くなります。