- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2009/09/16
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ストーリーには特に感動はしない。頑固なジジィがその頑固さを最後まで貫きとおすだけで、今思い返しても暴力が脳味噌を支配しているような前時代的な考え方には思わず笑いが出てしまう。ただそれがバカにしたような笑いかと言えば決してそうではなく、不器用な父さんが不器用なまま不器用な自分を貫き通しているのを見たような、バカだなぁと思いながらもしかしどこかほほえましい、そんな笑いなのだと自分では思う。頑固だとか、一本筋が通っただとか、大人の男に対してかつて抱いていた一貫したイメージはすでに崩壊してしまったのだけれども、でも、まだここに居たよ、と。そんな古き良きアメリカ人の象徴としてのじーさんと、グラン・トリノは完全にシンクロしていて、グラン・トリノは話の本筋には入ってこなくても常に物語のどこかに意識させられる。大勢の人がじーさんの持っているグラン・トリノにあこがれて、じーさんの孫だって欲しがる。ちょーいかすね、グラントリノ、ってな具合に。しかしかたくなに誰にも譲らず、自分の聖域を守り通して、最後に譲ったのは──。非常にシンプルな映画で、アメリカを反映しているともとれて、その部分を解釈的に見ればもっと面白いのだけれども、イーストウッドの圧倒的なかっこよさを見る為だけにいってもまったく損はしない素晴らしい映画だった。特に、イーストウッドがスーツを着る場面があるのだけど、そこでは思わず息を飲んだ。こんなかっこいいジジィがこの世にいるのか!!! って。
あとほんとにどうでもいい、たぶんストーリー的には「じーさんはなんだって直せるんだぜ」みたいなことを言いたかっただけであろう、場面があってでもそこがぼくはめちゃくちゃ好きになった。「子供たちが集まっている部屋にじーさんがやってきて、ネジかなんかが外れてガタガタになっている洗濯機を即座に直して見せる」場面。洗濯機はガタガタといっても、バランスが崩れているだけで普通に使える。しかしそうはいっても、ガタガタで、たぶん誰かが嫌だなぁと思って、直そうと思ったら、ねじを巻いただけで簡単に直せるのに、誰もそうしない。それはたぶんみんな自分に関係ないと思っているからであって、直さないの? と聞いたら、「え、なんで自分が?」という顔をすると思う。でもそれを、気がついた瞬間に直してしまうじーさんが、凄くかっこよく見えた。