- 作者: 元長柾木,BUNBUN
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/11/25
- メディア: 文庫
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「全死大戦」の世界では、過去何千年か前の人達はその「メタテキスト」が読めたらしいのです。じゃあなんでその人たちが読めなくなったのかと言えば、「法」のせいであると。「法」が生まれたことによって、人間の選択肢、あるいは行動可能性とかいったものが大幅に減らされることになった。本来人間は本質的に全ての事を行う可能性を持っていて、その上で行動していたはずなのだが法が生まれたことで、それ以前の段階に入り込んで選択肢を奪ってしまう。そのせいでよくわかんないけど「メタテキスト」が読めなくなって、そんなんイヤダ!! というメタテキストが読める気が狂ったような方々が、「法ぶっ壊す!!」といって戦争を吹っ掛けようとしているのが、「全死大戦」のストーリーの骨格のようです。「法ぶっ壊す!!」というから世界中の法を持っている「国家」に兵隊そろえて突撃して言って世界を征服するのかといえばそう言う話ではなく、世界を牛耳る力を持っているあまり多くはない「メタテキストを大規模に改変する力を持っている」人達を倒したり味方に引き入れたりして世界を改変しようとしているお話みたいです。メタテキストとは人の役割みたいなものですから、それを大規模に書き換える力を持つことによって事実上世界を支配できるのかもしれないですね。法がない世界ってのはどうなんですかね? 成立可能?
んー、こういうのもセカイ系っていうんですかね? 定義がよくわからないですけれども、現時点ではこれだけ大上段の目的を挙げておきながら実際に書かれるのは中学生女子が難しい数学の問題を盗み出してきゃっきゃする話とか、中学生女子がクラスのみんなから陰湿なイジメを受ける話とか、ポストに大量に投函される「あなたが好きです」という手紙の送り主を突き止める話とか、びっくりするぐらい日常のお話の連続なんですよね。セカイ系というのはたぶんこういう日常の出来事と世界の危機が関連しているような話だと思うのですが、その定義で行くと「全死大戦」をセカイ系というのはちょっとおかしいような気がする。たしかに学校で起こる事件は今のところ恐ろしいぐらいに小さいですけれども、それは作中でも小さい事件として扱われているし、大きな事件へと至る最初の小石みたいな扱いで。だんだんと問題はこれから大きくなっていくことが示唆されている。セカイの謎にこれからどんどん肉薄していく気配がこいんですよね。まあまだ完結してないんでなんともいえないんですけど。次巻以降も学校であーだこーだやってたらセカイ系で、舞台をもっと世界の謎に近づけてきたらセカイ系じゃないといえそうです。ま、セカイ系だとかセカイ系じゃないとかそんなんどーだっていいんですけどね。
二巻はまた一巻とは違った面白さがあると最初に言いましたけれども、舞台がまたガラっと変わっているのが大きいように思います。「とある魔術の禁書目録」と、「とある科学の超電磁砲」の関係性といっていいかもしれません。ちょっと違うけれどね。電磁砲を引き合いに出したのは、何しろ舞台は女子校で、ゆりゆりした女の子がらぶらぶしたり陰湿ないじめが起こったりするわけですから。それにしても女子校といえばゆりと陰湿ないじめがセットみたいにして語られますけれども、ほんとにそんなにそのままなんでしょうかね? いや、そのままってのはなしにしても、これに近いことって日常的に女子校では行われているのだろうか。だとしたら恐ろしい限りです。 まあそれは置いといて、さっきも書いたように基本的に学校でこの巻での主人公嬢瑠璃ちゃんが探偵役みたいなことをやって学校の事件を解決するみたいな流れなんですが、嬢瑠璃ちゃんがスゲェボンクラなんですよ。第一章は嬢瑠璃ちゃんの幼馴染の女の子が「先生の出すテストの問題が難しいからなんとかして!!」っていう依頼をしてくるんですが、その解決法として「仲間の一人が先生を呼び出して、その隙に先生のパソコンを持ち去ってテストのデータをコピーしてまた戻す」っていう超ボンクラな方法を使うんですね。パソコンにデータが確実に入っている訳でもないし、だいたい先生のパソコン勝手に持っていくのは誰かが止めるだろうさすがに、とかそれ以前の問題で、「メタテキストが〜」とか「世界が〜」とか「戦争が〜」とか言っている子がパソコンをそそくさと盗み出していくその姑息さに笑います。あとわりとうまくいかないことがあると暴力的手段にでるんですが、かなり弱いのでぼっこぼこにされます。もうちょっと対策を立ててから暴力的手段に訴えろよwwwwと思うわけですが、その辺はあまり考えないようです。いや、まあ「世界が〜戦争が〜メタテキストが〜」とかいっても中学生なわけですからこれはこれでリアリティがあるんですが、そのギャップがギャグになるかシリアスになるか、ギリギリなところでせめぎ合っているように感じます。普通に考えたら明らかにギャグなんで笑うのが正しいようにも思うんですけれども、その裏でやっている概念論争やらはしっかりしているし、地名は現実にあるものだしと裏がしっかりしているのでやっぱりギリギリなところでギャグとシリアスがせめぎあっている。そんなわけで、やっぱり読む人は選ぶかな、と。でも個人的には最近で一番のヒットなんで大好きな作品です。オススメ。