基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ラギッド・ガール

 読了。傑作なのは疑う余地もなく。特に表題作でもある『ラギッド・ガール』は、最初から最後まで完璧で、言葉を失った。わたしが読んだものは、ただの言葉ではなく、その奥にある何かだ、という確信を持つ。その奥にある何かとはなにか。飛氏いわく言葉に出来ぬ「御しきれぬ野蛮」。ラギッド・ガールは、それに触れることが最もうまくいった作品だという。さいこうだった。これ以上のものには、もうお目にかかれないかもしれない。そう思うと、悲しくなってくる。飛せんせは大変だ。次からは、これを超えていかないといけないんだから。

 この短編集は、あまりにも凄すぎて、わたしみたいな素人は何を書いていいのかわからない。なので一応当たり障りのない紹介から始める。本書は『グラン・ヴァカンス』を第一作とする『廃園の天使』シリーズの第二作目、短編集である。『グラン・ヴァカンス』は「数値海岸」と呼ばれる仮想都市群のひとつを舞台にした作品であり、『ラギッド・ガール』はその中の諸要素を説明したり、掘り下げたりする短編集となっている。この作品単体でも充分楽しめる出来だが、やはり『グラン・ヴァカンス』から読んでおいたほうがいいだろう。状況だけが書かれSF設定が意図的に消去されている『グラン・ヴァカンス』と違い、『ラギッド・ガール』はSF設定、伏線てんこもりでもうさいきょう!

 小説には基本的にはテーマがあり、小説について何かを書くときはテーマについて言及した方がやりやすい。なぜならテーマは作品の核、あるいは本質だと思われているからで。そこに触れておけばとりあえず安心、というわけだ。しかしわたしはこの『廃園の天使シリーズ』に、ある特定のテーマを見つけ出すことができなかった。あまりにも多くのものが複雑にからまりあっていて、あたまがこんがらがってしまう。ただ、いまこうして感想を書いていたら、こんなのもありではないかというテーマが思い浮かんだ。そのテーマとは、「SFとは何か」だ。飛せんせーはきっと、飛せんせーが思い浮かべる『SF』を書いているのだ。やっと納得がいった。この捉えどころの無さは、『SF』そのものの表現だったのだ。もし、SFが何かが知りたかったら『廃園の天使シリーズ』を読めばいい。わたしが誰かにSFをオススメするとしたら、間違いなくこの作品を推すだろう。

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)