世の中にはとにかくアホが多い。会話の流れを一ミリも考慮しない話題を振ったり、誰もが了解していることを何度も何度も聞いたり、誰も面白いと思っていないことを、自分だけは面白いと錯覚して披露し続けたりとアホの種類には際限がない。じゃあ、いわゆる良識人とアホを分ける壁とはいったいなんなのか? なぜ日本という文化的に発達した国にいながら、際限なくアホが生産されてしまうのか? どうやったらアホなふるまいをしないですむのか? そんなようなことを考えていくのがこの『アホの壁』です。真面目な心理学方面の話もちょいとい面白いのですが、それよりも筒井康隆先生が読んだ物、観たもの、聞いたもの、などなどの実体験から書かれる「アホ実例集」的な側面が面白い。文学からの引用で言えば『百年の孤独』だったり、歴史で言えば『クレオパトラ』、心理学でいえば『フロイト』と縦横無尽。考えてみればわたしたちが笑い話のタネにするのはほとんどが「アホな人」もしくは「アホな自分」なわけであって、アホな人と遭遇することは、もしくは自分がアホであることは、客観視し、分析することさえできれば非常に面白い体験談になるですよな。ここに集められた体験談、分析も筒井康隆的にぶった切られていて、そのあたりがおもしろかったりするのです。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/02
- メディア: 新書
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