基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ジャンプの人気マンガ家37人に創作方法を聞いた『マンガ脳の鍛えかた』を読んだよ

 これは面白い! 普段あまり表に出てこない漫画家が、創作のやり方や、絵の描き方、道具、オリジナリティの出し方などをガンガン語ってくれています。最初は37人もインタビューして、一人一人の文字数が極端に少ないおざなりなものになってないかな? と疑問だったんですが、それぞれ得意分野のテーマに絞って聞いていたのが良かったのか非常にまとまったインタビューになっていました(たとえば空知英秋さんだったら「セリフ」というように)。

 しかし気をつけた方がいいことがひとつあります。37人にインタビューといっても、そのうち12名は1ページずつのみ、しかも四つの簡単な質問があるだけで、物足りないです。井上雄彦さんとか冨樫義博さんとかがここに入っているんで、その二人を目当てに買うと肩透かしをくらうかもしれません。以下はインタビューを受けている漫画家のリストです。

コミックナタリー - ジャンプ作家37人のインタビュー集「マンガ脳の鍛えかた」より
本宮ひろ志(「サラリーマン金太郎」)
車田正美(「聖闘士星矢」)
高橋よしひろ(「銀牙-流れ星 銀-」)
秋本治(「こちら葛飾区亀有公園前派出所」)
宮下あきら(「魁!!男塾」)
ゆでたまご嶋田隆司中井義則キン肉マン」)
鳥山明(「DRAGON BALL」)
高橋陽一(「キャプテン翼」)
徳弘正也(「ジャングルの王者ターちゃん♡」)
荒木飛呂彦(「ジョジョの奇妙な冒険」)
森田まさのり(「ROOKIES」)
萩原一至(「BASTARD!!―暗黒の破壊神―」)
小畑健(「バクマン。」)
冨樫義博(「HUNTER×HUNTER」)
井上雄彦(「SLAM DUNK」)
梅澤春人(「BØY」)
つの丸(「みどりのマキバオー」)
藤崎竜(「封神演義」)
和月伸宏(「るろうに剣心明治剣客浪漫譚―」)
うすた京介(「ピューと吹く!ジャガー」)
武井宏之(「シャーマンキング」)
島袋光年(「トリコ」)
尾田栄一郎(「ONE PIECE」)
許斐剛(「テニスの王子様」)
矢吹健太朗(「TO LOVEるーとらぶるー」)
久保帯人(「BLEACH」)
岸本斉史(「NARUTO―ナルト―」)
河下水希(「いちご100%」)
稲垣理一郎村田雄介(「アイシールド21」)
大場つぐみ(「DEATH NOTE」)
空知英秋(「銀魂」)
天野明(「家庭教師ヒットマンREBORN!」)
星野桂(「D.Gray-man」)
西義之(「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」)
松井優征(「魔人探偵脳噛ネウロ」)

 そうそうたるメンバー! 読んでいて思うのは、やっぱりみんな漫画を描くことがスゴイ好きなんだな、ということです。自由な時間がほとんど取れない上に、常にアンケートの上下に神経を使わされるんですからそりゃあ好きじゃないとできないよなあというのはもっともなんですが、その熱量が想像以上だった。みんな自分なりの「マンガ哲学」を自分の中に持っているんですよね。これが、オレのマンガの作り方だ! 道だ! 信念だ! っていう。下に引用したのは荒木飛呂彦さんの言葉ですが、これが冗談じゃないぐらい他の漫画家も命懸けて描いてんなっていう感じがします。

 「もう本当にね……マンガ家ってそういう感じで描くんですよ。主人公が笑っている時には笑っているし、歯をくいしばっている時は食いしばっているし。今は本当に馬ってやばいわ、車にしとけばよかったって思ってます(笑)」

他には、尾田栄一郎のこの言葉

 どんなに小さい人物でも自分で描く
 「点でも、人です」

 絵に対するこだわりが強くて、背景をアシスタントに任せてしまっているのが悔しい、だからせめて人だけは自分で描くという尾田栄一郎。「点でも人」っていうのはまったくその通りなのだけれども、でもやっぱり所詮点なわけですよ。そんなもの、だれが描いても一緒じゃん、とわたしなんか思ってしまう。だって点だし。でもこだわるんですよねー、もうこれはほとんど狂気ですよ。だって今のワンピースって人がゴミのようにいっぱい描かれてますもん。これを全部自分で描くだって? 信じられん! 天才となんとかは紙一重っていいますけれども、ちょっとこの部分を読んだ時はゾっとしました。

わたしの漫画の創り方

 みんな「わたしの漫画の創り方」を語ってくれているんですが、同時にみんなが言うのが「わたしのいうことをそのまま真に受けているようじゃ漫画家にはなれない」といったような内容の言葉。これがなんとなくわかるなーと思うのは、自分自身楽しみながらやらないと長続きしないからなんですよ、たぶん。使う道具ひとつとってもその人に合う合わないっていうのがあって、そういうのは人に言われて身につけるものじゃあない。自分で見つけるしかないんですよね。

 でも共通していることもあって。それが何かっていうと「妥協しない」こと。努力し続けることといってもいいかもしれない。非常にシンプルながらも、努力は大事だ。諦めなかったからこそ、今ジャンプに連載している人たちは連載を勝ち取れて、そして残り続けているわけだから(その陰には努力してもダメだった人たちが大勢いるわけだけれど)。努力してもダメだった人たちとの間にあるのは……身も蓋もない言い方だけどやっぱり才能というよりかは、一般的には才能と呼ばれるような、また別の何か、だと思います。自分の中の哲学がいかに強固か、みたいな。うーむ、わからん。

マンガ脳の鍛えかた 週刊少年ジャンプ40周年記念出版 (愛蔵版コミックス)

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