基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

「大森望のSF漫談」番外編  「伊藤計劃Project Goes on...」に行ってきたよ

 簡易レポです。翻訳者だったり書評だったりと幅の広い仕事をしている大森望氏と、元SFマガジン編集長の塩澤快浩氏の二人が伊藤計劃について語る、という内容。一時間程度のモノでしたが、円城塔氏が周りをうろうろしていたり、篠房六郎氏が現れたりと面子的に凄く豪華でした。まあ円城塔氏は結局最後まで周りをうろうろ徘徊していただけで、ほとんど喋っていなかったんですがね! まるで打ち上げに参加する為だけに来たかのような徘徊っぷりでした。

 伊藤計劃氏がどうやってデビューに至ったか、各人から見た人柄、印象であったり、生前のエピソードが主に語られていました。どうやってデビューに至ったかは、もうかなり色々な場所で語られていますけれど、小松左京賞に応募→円城塔と一緒に最終選考にまで残るも、落選→円城塔は即座に塩澤快浩氏に送り、伊藤計劃も送ったらどうだと声をかける。→目に止まり出版。という流れです。

 塩澤快浩氏に送る過程で、伊藤計劃氏からのA4一枚程度の「良かったら見てください」という内容の文章があったそうで、今回持ってきてくれていました。読んではくれなかったのですが、凄く丁寧な内容で、「私は素人なので判断できませんが、大森望氏などからは面白いと言っていただけているのでそこまで酷いものではないのではないかと思うので、読んでいただけないでしょうか」というようなことが書いてあったそうな。最初の文章は「ご多忙を極めると思いますが…お手すきの時間がありましたら…」といったような文章で始まっていて、凄く丁寧な人柄が表れていますよね。まあ塩澤快浩氏は結局その原稿をすぐには読まずに、読んだのは四ヶ月後だったそうですが……。大森望氏になじられていました、「そんな丁寧な手紙がついているんだからすぐに読めよ! ぼくだったら読むよ!」って。

 小松左京賞最終候補作→早川で出版の流れが出来てしまったせいで、それ以降の落選者はみんな早川に送ってくるようになった、とも言ってました。「そういうルートがあると聞いたものでお電話してみました……」といって送ってくるそうですが、結局どれも読んでないそうですよ! ルート、あるようでないのかも! まあその関係で「なんで早川のために金出して賞をやらないといけないんだ!」といって小松左京賞が終わったなんていって笑ってましたがどの程度まで本当かよくわかりませんね。賞といえばSFコンテストの話も少しだけありました。sfコンテストは勢い余ってやると書いてしまったけど、何年か前からやろうとは思っていた。今は小松左京賞もなくなってsf長編の小説賞がなくなってしまったので…というお話。早川からはアガサクリスティ賞もスタートするのでそっちもよろしく!とのこと

 ここからは細かいネタ。ネタかぶりを以上に心配していたそうです。チャールズ・ストロスの何かのネタともろかぶりだー!(別に気にならないレベルだったらしい)もう書けない! と絶望していたとか。あと、重版が決まった時に、一番何を喜んだかというとオーメンがなんちゃらという部分の誤植の訂正ができること。「ようやく直せます!!」「俺がそれを間違えちゃいかんだろう!」と言っていたとか。それから書くのがめちゃくちゃ早かったそうです。「栗本薫か!」というのは大森望氏の弁。ハーモニーも書き始めてから二、三週間しかかかってないらしいですよ。しかもその間に一週間ほど書けないスランプ期間があってなおその速さ。全然スランプじゃないじゃん! ちなみにハーモニーのキャラクターのモデルはみんな看護婦さんだったとか、性格のモデルなのか容姿のモデルなのかは不明。入院するたびにどんどん看護婦さんが可愛くなると言っていたそうです。

 塩澤氏と打ちあわせをしているときでも、ところで次のJコレは何が出るんですか? アレはまだ出ないんですか? と自分以外の作品のことばかり気にしていたという。塩澤氏はそれを称して「普通のオタク」と言っていましたけれども、これからはそんな彼が悔しがるようなものを作っていきたい、と言って綺麗に締めました。ちなみに伊藤計劃記録は最初に企画として提出した時は、二冊分として計算していたので、恐らくこの先出るであろう、というような話でした。もちろん明言はしませんでしたけれども。虐殺器官が本日で7刷決定し、伊藤計劃記録も2刷決定したそうですので期待してよさそうです。なんか虐殺器官で初めてSFを知った、とかいう人もいるみたいですよ。スゴイですね……。そんなところで。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

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