基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

条件を限定した方が想像しやすい

 少し前の話。本屋で適当に手に取った雑誌に村上春樹のエッセイが載っていて、それが「おお、なるほど」と感心するような内容だった。それはどんな内容なのかというと、村上春樹が遭遇した乞食の話である、であったと思う。何分本物が手元にあるわけではないので記憶があやふや。細かい部分に違いがあるかもしれないけれど本筋は合っている自信がある。話を元に戻すと、ショッピングモールに行った村上春樹の元へ乞食がやってきたのだが、その乞食方(とは言わないだろう)がなかなか興味深いのである。普通の乞食(という言い方もおかしいだろうが)であれば、「すいませんが、お金を恵んでいただけませんか」と言ってくるだろう。事実村上春樹自身もそういってくるだろうと思い、そうであったらお金など渡さなかっただろうといっている。しかしその乞食は、「すいませんが、あそこにあるマクドナルドでハンバーガーを食べたいので5ドル恵んでくれませんか」と言ってきたのだ。村上春樹はなんとなく突き動かされて、5ドル渡してしまったという。本当にその5ドルでハンバーガーを買うかどうかはともかくとしても、実際に目の前にあるマクドナルドを指さして、そして用途を具体的に限定したことによって、「想像」しやすくなったせいなのだろう。ここから導きだされる教訓は、人を動かしたかったら、漠然としたお願いではなく具体的なお願いをしろ、とかそんなところだろうか。きっとそれは書評だろうがマンガ評だろうが、一緒なのだと今日道を歩いていて考えた。漠然と本全体について書くよりも、それよりも他のことは全部無視して一点集中して紹介したほうが、恐らく良いのだろう。まあでもそんなの当たり前か。今更そんな当たり前のことに気がつくあたり、なんとも頭が悪いという他ない。気付いた時はやった! という気分だった。今はしょぼーん、という気分である。