基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

零崎人識の人間関係

 「人間関係」というヤツは、なかなか厄介なもので、世の中の問題の大半はほとんどここに集約されてしまうんではなかろうかという気がする。生まれたときから親との関係が始まって、周りから人間がいなくなることは基本的にあり得ない。まあそれでも人間というやつが、まったくもって簡単に分かりあえるように出来ているのなら関係というやつも厄介でもなんでもないわけだけれども、残念なことに相手が何を考えているかは今のところわからないし、人格というものには裏だとか表だとかもあるようで、そこのところの読み違い、がどうしても起こってしまう。読み違えば当然厄介なことになる。「人間」というのは、身近にあるもっとも大きな謎かもしれない。

 だからどうした、というものではなくて。でもそんなことをわざわざ書いたのは、この『零崎人識の人間関係』四冊は色々な「人間関係」を書いているからであって。まずは人間関係というものを分解しておいた方が良いだろうという純粋な思惑があるわけですなあ。そもそもこの戯言世界観の成り立ちからして、そういうところがありますし。「最強」という概念と「無敗」っていう概念を戦わせたら超おもしろくねぇ!? で始まって、最強と無敗とは実際問題ただの言葉遊びだけど、それがどんな意味なのか考えて、中身を入れていく。それがキャラクターとして出てくる。戯言シリーズがすごいのは、惜しげもなく「最強」とか「最悪」とかいうビッグな概念をガンガン投入してしまうところにあるんじゃないかなあ。でもそれって、めちゃくちゃ面白いかわりに一回こっきりの禁じ手、的な部分もあったり。かつて清涼院流水のJDCシリーズに惜しげもなく投入される魅力的なキャラクター達を称して大塚英志は「ぼくだったらこのうちの一人で一冊書けるのに、一冊のうちに何人も出てくるから凄い」みたいなことを言ってましたけど、戯言シリーズだって負けちゃあいませんよ。そのおかげと言ってかこうしてスピンオフが次々と(次は「人類最強」を主人公にしたスピンオフが出るそうですし)出せるわけで。

 ところで話を人間関係の方へと戻すと、まあこれは言うまでもなく人間関係の話なのですよ。「匂宮出夢」「零崎双識」「戯言遣い」「無桐伊織」それぞれと、零崎人識くんの関係が語られるわけですなあ。兄弟関係あり、家族関係あり、友人関係あり、恋愛関係あり、もちろん「無関係」だって関係の一つです。そういった様々な関係が書かれています。で、わたしが一番面白いなーと思ったのは、名前に「人」が入っている人識君がそれこそまさに「人間」として書かれているところなんですね。人識くんは矛盾した状況を観て「傑作だぜ」とつぶやく。「矛盾」だとか「理不尽」の体現がこの四冊の主人公である零崎人識くんで、同時に人識くんは人間を体現している。人識くんがすることは理不尽の肯定。つまりこの作品の中でいえばあくまで人間っていうのは、矛盾を抱えて理不尽を抱えている存在なのだ、と思う。そしてだからこそ人間関係はうまくいかないし、好きだといったり嫌いだといったりで振り回されるし、好意でやったことを誤解なく好意として受け止めてもらっても嫌われたりするし、逆もあるしでうまくいかない。でも、うまくいかないからこそ面白い、ともいえる。ピース、全ては平和なり。全ての人間は矛盾していて、矛盾しているからこそ面白くて、人間関係というやつは関わる人数が多くなればなるほど蒸すかしくなって、何が起こってもおかしくはない。全ては運命なり。だから世の中を人識くんは「傑作だぜ」と肯定する。ピースv日常に潜む大いなる謎、「人間関係」それを殺して解して並べて揃えて晒しちまうのがこの「零崎人識の人間関係」であったかと思います。

零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 匂宮出夢との関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 匂宮出夢との関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 零崎双識との関係 (講談社ノベルス)

零崎人識の人間関係 零崎双識との関係 (講談社ノベルス)