ダメだけど〜というのは帯から引用しました。『〜ガキの頃から〜 一色まこと短編集』は、『花田少年史』『ピアノの森』の一色まこと先生による、「人間賛歌」の言葉がふさわしい傑作短編集でした。いやーほんとに、どの短編も色々な「人間関係」を書いているのですが、平気で性の話題、容姿の問題に踏み込んでいくんですね。たとえばあまりにもどんくさい格好で、ふっつーの垢ぬけない女の子が女心を一ミリも理解しない男の子に告白される『野郎なんかにゃわかるまい!』。反対に、美人で発育が良すぎるせいで、子供の時から大人に色眼鏡で見られてしまう話『駒子』。ずーっとデブで家族全員デブな女の子が、好きな男の子の為に頑張ってダイエットをする『いつも一緒』などなど、読んでいると「あーそうだよなー。漫画だとみんなかわいい絵で書かれているけど、見た目って実際は凄く大事で、それによって人間関係も左右されるよなー」とか思いながら読んでいました。
それから人間のバカなところを書いた『ばか。』シリーズもとっても良かった。こちらはそれぞれ一つの独立した短編で、浮気したり、性欲が暴走して女の子に振られてみたり、キャバ嬢にお金を貢ぎまくって観たりするお話です。そこに出てくる人たちは、本当にダメで、バカな奴らがいっぱいで、そいつらはバカでダメだから苦労して、でも最後にはそれに対して「だがそれがいい!!」と肯定してのける。大上段に構えてしまえば人間って、どうしたって見た目に左右されるし、どうしたってバカな部分はあるものだし、そういう人間関係を描く上で、避けては通れないところをちゃんと描いているのが凄く良かった。あと一色まこと先生って、ブサイクをブサイクに、普通の子を普通に、かわいい子をかわいく描くのがすっごくうまいんですよね。容姿や表情の変化がそのキャラクターの魅力に直結していて、短編なのでページ数は少ないのですが、情報量が凄まじく多いです。ころころと移り変わる表情を観ていて、漫画の魅力というものを、再確認しました。
- 作者: 一色まこと
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/03/23
- メディア: コミック
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