基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

遠子先輩(紙の本が主食)はこれからの時代、電子書籍ばっかりになっていったらいずれ餓死するんじゃねーかと考えると胸が熱くなるんだ……

『文学部少女』の映画がやってきたので観てきました。原作未読。事前に、原作読んでいないと意味わからないとか、はしょられすぎているとか、あんまり良い評価を聞かなかったのでハードルをガンガン下げて観に行ったのが功をそうしたのか、はたまた原作未読で削られている部分がわからなかったのが良かったのか、大変面白かったです。それから物語の前日譚が語られる短編映像がついたものを観たのですが、こちらを見た方がより理解が深まるし面白いのでオススメです。

開始30分はキャラが出るたびにアwwwゴwwwww(キャラクターのアゴが鬼とがっている)と笑いが止まらなかったけれども、途中から気にならなくなったし、音楽は良かったし、プロットも宮沢賢治銀河鉄道の夜によくのっとってて良かった〜〜。しかしアゴはあれ何なんですかね? 一番最初に出てきた瞬間が、全編の中で一番とがっていて「このアゴは誰かを突き殺す為の伏線なのか?」と疑問に思うぐらいとがってましたよ。

物語

宮沢賢治の名作、銀河鉄道の夜がお話のメインテーマとなっています。孤独な少年ジョバンニは、ある日親友カムパネルラと共に銀河鉄道に乗り込む。旅の終わりにジョバンニは、カムパネルラといつまでも一緒だと誓うが、カムパネルラは一人、行ってしまう。その時にカムパネルラは一体何を思ったのか、ついてきてほしかったのか、あるいは別々の道を歩むことを了解していったのか……。

ジョバンニの役割はこの物語の主人公であるコノハが担い、カムパネルラの役割はある少女二人が担い、作品についての登場人物、また著者の宮沢賢治の心情の推測、作品解釈が幾通りもこの作品には現れていて、よく原作としての『銀河鉄道の夜』を昇華しているなと思いました。

キャラクター

あとはやっぱり明るい遠子さんが良かった。すぐに気を抜くと鬱々とした物語になってしまいそうなところを、いい感じに調和してくれます。やはり「本を食べる」というぎょっとしてしまうような点が、この作品が最悪な展開にはならないという安心感の基点となっていると思いました。恥ずかしい事を真面目に言うならば、僕は「愛の深さ」というのはそれが向けられる対象の、ダメなところをどこまで受け入れられるかだと思っています。たとえばアニメに対する愛だったら、どんな駄作でも受け入れて見せるというのがその愛の深さであるというように。その中でも遠子先輩の本に対する愛は「食べる」という行為に象徴されているように驚くほど深くて、それがこの物語を常に良い方向へと推し進めていたのです。

あと一人猛烈に可哀想な子が出てくるのですが、可哀想さゆえにこの作品の中で際立っていてある意味良かったのかもしれません。でもほんと可哀想……原作を読んだら少しはフォローされているのだろうか……。

何はともあれ、短い時間によくまとまったいい映画だと思いました。あとねーこれは僕うまく説明できないから特に何も書いてないんですけど、音楽が良かったです。BGMも良かったし、主題歌も良かった。作中で歌が流れてくるところとか、最高でした。

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

遠子先輩はこれからの時代厳しくなるだろうな……。

遠子先輩は、基本、本しか食べられないみたいなんですよね。しかも紙の本限定、たぶんビジネス書とかも食べれない、小説限定なんでしょう。もしこれから先紙の本が減っていって、電子書籍が一般的な「本」の形になったらと想像すると胸が熱くなるな……。Ipadをばりばり食べている遠子先輩はもはや人間離れしすぎていて想像したくないです。まあ紙の本が完全になくなることなんて、たぶんないでしょうから安心していいでしょうが……。しかし電子書籍を遠子先輩は本と認めるのでしょうか。謎です。

しかし本を食べるといってみんな結構普通に受け入れてしまっていますが、結構これって大変なことですよね。いつからそんな事になったのかも気になります。たとえば生まれた瞬間から本しか食べれなかったのなら、いったいどうやって生きていけるというのでしょうか。親はおっぱいを飲ませようとしてもまったくうまそうにしないどころかどんどんやせ細っていく娘を観て発狂しそうになったに違いありません。まさか正解が「本」だなんて誰も思わないでしょう。ですので、現在生き残っていることを考えれば、恐らく幼少時のどこかで、その属性が付いたに違いありません。短編で上映された過去編には、7歳ぐらいの遠子先輩が本を食っているところが描かれていたのでそのあたりでしょうか……。

毎日食べる本を考えるのも結構大変です。芥川龍之介全集とかを買ってきて、毎日芥川ばっかり食べていたら「っけ、また芥川かよ」となんかいやな気分になってくるでしょうし、ゾンビ物の小説の味とか結構気になりますね。恋空とか食べたらどんな味がするんでしょうか。甘すぎて吐き気がするか、もしくは無駄につらすぎて辛いのか……。それに毎回新刊を買わないといけないので(さすがにブックオフで買ってきた本は食えないだろう常識的に考えて……)結構つらいかもしれませんね。本棚の肥やしになった本とか、埃まみれであんまり食べたくなさそうです。