基本読書

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20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

著者はスタンフォード大学で企業家育成コースの講座を担当し、トップクラスの評価を受けているというティナ・シーリグさん。こんなことをわざわざ書く必要があるのかどうかわからないけれど、女性です。本書では彼女が授業で教える内容を学べるのか? と言えば、残念ながらそんなことはありません。ぶっちゃけ言っている内容は目次を読めばわかりますが非常に抽象度の高い、実践的なものとはとてもいえない精神論的なものであり、その点に限って言えばその辺によくある自己啓発書と大差ないレベルだと思います。ただ、教えている内容を学ぶ「方法」を教えてくれる一冊ではあります。

なぜ授業で教える内容が学べないのかと言えば、それが実践に結びついているからです。たとえば、学生に5ドル渡して、二時間でそれをできるだけ増やしてこいという授業をするそうです。学生は思い思いの方法、たとえば宝くじを買うとか、ラスベガスに行くとか、そういうくだらない、誰でも思いつくようなものから5ドルでタイヤの空気入れを買い、道行く自転車乗りに空気を入れてみたりと様々です。中でも一番のお金を稼いだのは、その研究発表を大勢の前で行う3分間のプレゼンの時間こそが重要だときがつき、そこの生徒に宣伝をしたい企業に申し入れを行い、CMを製作し発表することによって大金を稼ぎました。

ここから学べるのは本書では「自分の殻を破ろう」と表現されていますが、要するに固定観念を外すことです。そしてそれは言われてみれば「なるほど」と思う事しかりですが、恐らくそれは実際にやってみて、自分で経験してみないとわからないことでもあります。「なるほど、固定観念を外せばいいのか!」と、著者の言うとおりに思い込んで、固定観念を外そうとしたって、うまくいくはずがありません。テニスの教本を読んだからと言って、いきなりテニスがうまくなるなんてことがありえないように、やっていくうちに学ぶしかないのだと思います。以下目次

目次

第1章 スタンフォードの学生売ります─自分の殻を破ろう/第2章 常識破りのサーカス─みんなの悩みをチャンスに変えろ/第3章 ビキニを着るか、さもなくば死か─ルールは破られるためにある/第4章 財布を取り出してください─機が熟すことなどない/第5章 シリコンバレーの強さの秘密─早く、何度も失敗せよ/第6章 絶対いやだ!工学なんて女がするもんだ─無用なキャリア・アドバイス/第7章 レモネードがヘリコプターに化ける─幸運は自分で呼び込むもの/第8章 矢の周りに的を描く─自己流から脱け出そう/第9章 これ、試験に出ますか?─及第点ではなく最高を目指せ/第10章 実験的な作品─新しい目で世界を見つめてみよう

目次を見ればわかるように、基本的にはその辺にありがちな自己啓発書的な精神論だけです。しかし本書の特徴を他の多くの自己啓発書と比べてあげるのならば、その具体例の多さではないかと思います。スティーブ・ジョブズから彼女の授業を受けた多くの生徒達の話まで、わくわくするような成功談が数多く読めます。たとえば第五章の「シリコンバレーの強さの秘密─早く、何度も失敗せよ」では、失敗の重要性について語っている訳ですがその中のジョブズのエピソードとして、スタンフォード大学卒業時のスピーチが載っています。要約すると以下の通り。

マッキントッシュを発表して一年後、ジョブズは自分で起こしたアップルにも関わらず経営陣と意見が合わなくなり、会社から追い出されてしまった。その時は絶望し、シリコンバレーから逃げ出すことさえ考えたが、自分の仕事が好きだという気持ちは本物で、一からやり直そうと決意した。成功者である重圧は初心者に戻った気安さに変わり、自信は前よりなくなったが自由になり、もっともクリエイティブな時期を送ることが出来た。クビを宣言されてからNeXTという会社を立ち上げ、ピクサーという会社を興し、妻と出会い、ピクサーはやがて「トイ・ストーリー」を生み世界で最も成功したアニメーション・スタジオになり、NeXTはアップルに買収されジョブズはアップルに復帰した。

ピクサーの成功、妻との出会い、そして現在のIphoneからIpadへの奇跡的な成功に至るまで、アップルから首にされたという失敗(その当時はそうとしか思えなかった)があったからこそ起こったわけで、後々考えてみればそれはまったく失敗とは言えない出来ごとのわけです。人生を大きな視点でとらえ、失敗から立ち直る為にすべてがかかっている。とそんなことはどうでもよくて、純粋にこうやって色々な人間のエピソードを読めることが楽しいのです。関係ないですけど最終的にジョブズのスピーチは二度も長文で引用され、「どんだけ著者はジョブズ好きなんだよ」と思わずつっこんでしまいました。なかなか面白かったです。

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

  • 作者: ティナ・シーリグ,Tina Seelig,高遠裕子
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: ハードカバー
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