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しまった! 「失敗の心理」を科学する/ジョゼフ・T・ハリナン

しまった! と思う時は誰にでもあるだろうが、往々にしてその原因を分析せずに、自分の不注意だったとかあいつが悪かったとかとにかくどこかの誰か、時には運やなんかに責任転嫁してしまう。しかしもし失敗した時に、本当の意味での何らかの要因があるとするのならば、偏見や間違った認識をもたずに正しく認識しておくことは大変有意義であろう。なにしろ誰だって失敗するのだから。

たとえばかつて麻酔医というのはそのミスによって多くの非業の死を生みだしてきたという。何時間もかかる手術に退屈した麻酔医が呼吸管が外れたことに気が付かずに窒息したり、麻酔に使われる科学物質は爆発の危険性が高く、たまに静電気によって患者もろとも木端微塵になったりしていた。

もっとひどいミスはいくらでもある。たとえば1972年のロバート・ロフト機長によるひどいミスだ。読んでいて思わず笑ってしまうような大ポカだが人命が大量に失われているので笑えない。機長はマイアミ国際空港へと着陸態勢に入った時に、表示灯がつかなかったので周りを旋回して原因を探っていた。しかしわからなかったので副操縦士に助けを求めた。また航空機関士を呼んだ。そしてたまたま整備士ものっていたのでついでに調べさせた。最終的に誰も機体を操縦していない状態になった。飛行機はどんどん高度を下げて行って、機長の最後の言葉は「おい! これはどうなってるんだ?」だった。五秒後、爆発炎上し機長を含む99人が死亡した。

上の例から導き出せる教訓は、「マルチタスクをしてはいけない」というものだろう。車の運転をしている時に電話をしてはいけないと同じようなレベルの話だ。以上のことから導き出される失敗しない為の法則は、失敗したくなかったら「制限すること」だ。それ以外の事はできないようにしてしまえばいい。

他にも一番大きな失敗の例には「自信過剰」があげられる。私たちは自分たちの事を割合理性的で合理的でちゃんと論理的に考えていると思っているが案外そうではない。南アフリカの金融機関の実験では借り手にローンを組ませたのは色々な条件ではなく葉書に魅力的な女性の写真を乗せたかどうかだったし、黒いユニフォームを着たチームは反則をとられる確率が高くなるし、同じワインでも値段が高く付けられた方を高く評価してしまうような、そんなブレブレで色んなものに惑わされるのが僕らなのだ。

長くなったが、私たちは失敗するとして、だったらどうすればいいのか? どうすれば失敗が減らせるのか?一つはさっきも書いたように「制限すること」だ。たとえば誰でも知っている「はさみ」は、ひとつは丸く、親指に沿うように、一つは小さく、他の指が入るようにすることによって誤用を防いでいる。

もうひとつの方法は、というかこちらが主だろうけれどもネガティブに考えることだろう。自分は絶対にどこかで失敗するし、しかし失敗した時は「なぜ失敗したのか」を分析しようと身構えること。正しい時はそれが何であれ自分の能力のおかげだと考えがちだが、失敗した時は偶然のせいにしてしまうのが常なのだ。そこを、なんとかすることだろう。

本書は誰にでも起こりうる失敗を扱った本だけれども、より広いテーマで同じように誰にでも起こりうる偶然の成功や失敗を扱った「たまたま」も非常に面白いので一緒にオススメしておく。

しまった! 「失敗の心理」を科学する

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たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する

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