基本読書

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IT全盛の時代に忘れてはならないこと

「IT全盛の時代に忘れてはならないこと」なんて大層なタイトルをつけてお前はいったいどんな凄い大上段からの無知なお説教をかましてくれるつもりだこの野郎と誰もが思ったに違いないですが(誰よりも最初に僕が思った)ただ単に、久しぶりに読んだE.G.コンバットが大変面白かったので何でもいいからとにかく書いておきたかったと言うだけです。

E.G.コンバットとは何か。秋山瑞人による小説、ライトノベルです。シリーズの一巻の初版が出たのは1998年で、その後順調にE.G.コンバット3rdまでを出したものの、E.G.コンバットFinalと称された完結編が未だに出ていないというある意味伝説のシリーズです。当然のごとく絶版でこんなところで紹介しても手に入れられるかどうかはわかりませぬ。あらすじも簡単に紹介しておきましょう。

地球はプラネリウムと呼ばれるエイリアンに侵略を受けており、女性は全員月に疎開している、という設定。男はいないのです、月に。で、みんなは多脚砲台にのってプラネリウムと戦う訓練を月で行っている。そこにかつてその学校の卒業生であり、地球に派遣された後も輝かしい戦果を誇った英雄、ルノア・キササゲが教官として帰ってくる。しかしその教官の下につくのは学校始まって以来の落ちこぼれ5人組で──という感じ。

英雄ルノア・キササゲが落ちこぼれ達に最初にやらせる訓練は、ほとんど自動操縦で立ったり動いたりできる双脚砲台を、全部手動で動かせるようにしろというものだった。手動ではドアを開けることさえできない訓練生達はみんな「なんで自動で出来るもんをわざわざ手動で動かさなきゃいけねーんだ」と不満をたらたらと口にするのだが、これに対する教官の「なぜ自動制御で動かせる双脚砲台をわざわざ手動で動かさせるのか」についての、独白がまた泣かせるのである。ちなみにこの部分は本編では、訓練生達は盗み聞きしているという構図で演出される。

 問題は、操る兵器は怪力無双でも、それに乗ってるのが人間だってこと。パイロットが急にお腹が痛くなることだってあるし、当直の索敵要員がい眠りすることだってあるし、連絡の手違いで部品が来なくて、リニアガンを修理できないことだってある。そういうとき、みんな思うの。『大丈夫だ。この辺にはまだ敵はいない。めったなことはないさ』って。──そう、大丈夫なのよ。百回に九十九回くらいは。
 総督府や北米司令官は景気のいいことしか言わないけどさ、今の地球の工業生産力って百年前と比べたら百分の一がいいとこでしょ? 損傷個所の部品の補給が受けられないことなんてしょっちゅうだったもの。そのくせ、兵器は強い分だけぐちゃぐちゃに電子化されてめちゃくちゃに複雑で、機能の半分でも理解してる奴が部隊にひとりもいないなんて当ったり前でさ。でも、それじゃだめなんだってわかった。なぜトリガーを引けば弾が出るのか、姿勢制御系はどんな理屈で機を水平に保つのか、たったひとつの操作で双脚砲台が起動するとき、流体脊髄は何をどうやって関節をアクティブにするのか。それがわかってないと、大丈夫じゃなかった百回目がきたとき、なにもできないもの。(中略)
 でもね、これだけは覚えておいて。オルドリンでの成績なんて、オルドリンの中でのものでしかないのよ。わたしが地球で知った一番大っきなことは、それ。だから、多分、わたしは連中が卒業するまでこのやり方を変えないと思う。なにも、実践でも流体脊髄のアシストを受けるなって言ってるんじゃないけど、GARPの──流体脊髄のアシストを受けなくても実戦をこなせるくらい、双脚砲台について知り尽くしていないと、転んだときに誰も絆創膏を貼ってくれない地球では、生き残れないから。(p.p.86-87 E.G.コンバット2nd)

新機軸のテクノロジーの全てを、僕達は把握しているだろうか。インターネットやツイッターはテレビや新聞、ラジオに変わるメディアとしてめちゃくちゃに持ちあげられているが、もしこれが革命や内戦という未曾有の事態になったらインターネットがちゃあんと敷かれていて、個人個人がツイッターで報道出来るなどと言う事を誰が保証してくれるというのか。

テクノロジーが僕達から日常のコミュニケーション、他様々な手段を奪っていき、便利だからそれを受け入れている。しかし、テクノロジーが無くなってしまった時に「どうするのか」。テクノロジーだけの問題ではない。特に技術の分野で特徴的だと思うけれど、かつて合理的な判断の元で行われていた数々の行動が、その様式だけが受け継がれたせいで「なぜ」それを行うのかにまで理解が至っていないということがあるのではないか。

この問題は言いかえれば「危機耐性」をつけろ、ということになるだろう。百回に九十九回は大丈夫でも、残りの一回はダメになる、そういう「もしもの時でもなんとか持ち直せること」が、今のような「転んだ時に誰も絆創膏を貼ってくれない」時代に必要なことではないだろうか。その為に必要なのは、「失敗の練習」ではないだろうか。

などと偉そうなことをいいながらその実E.G.コンバットおもしろ! ということが言いたかっただけなのでここで終わりましょう。何のオチもついてないけど。いやほんとおもしれーんですよE.G.コンバットね。僕が一番好きなライトノベルのシリーズです。

E.G.コンバット (電撃文庫 あ 8-1)

E.G.コンバット (電撃文庫 あ 8-1)

E.G.コンバット (2nd) (電撃文庫 (0307))

E.G.コンバット (2nd) (電撃文庫 (0307))

E.G.コンバット〈3rd〉 (電撃文庫)

E.G.コンバット〈3rd〉 (電撃文庫)