基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

突然失業してもこれさえ持っていれば生きていける!!──『ゼロから始める都市型狩猟採集生活/坂口恭平』

一点を除けば大変素晴らしい。文句をつけたい一点については後回しにして、素晴らしいのは本書を読むことによって「都市を見る目」が一変するところにあると思う。

「都市型狩猟生活」というタイトルに違和感を覚える人も多いだろうけれど、その意図するところは非常に単純なのです。一見したところ人が多くてごみごみしていて、人情味があまり感じられない東京周辺の都市を、「サバンナ」もしくは「ジャングル」のように見立てて「いかにしてホームレスで生きていくか」というわけです。

日常の身の回りにあるいわゆる「ゴミ」を「都市の幸」であるという視点で都市を見つめ直す……身も蓋もない言い方をしてしまえば、「ホームレス入門書」というのが一番しっくりくる言い方でしょう。
目次

1 衣服と食事を確保する
無職・無一文のきみ 衣服は日々実る 食べ物に困ることはない 酒、煙草、シャワーで疲れを癒す
2 寝床を確保し、パーティを組む
ダンボールハウスのつくり方 ザ・ベスト・ダンボールハウス 次のステージへ向かう前に パーティを組もう おいしい食事のありか 路上には娯楽スポットもある 師匠を見つける
3 生業を手にする
もうどこかに勤めるのはよそう <都市の幸>で稼ぐ どんな生業があるのか 店を開業してみる
4 巣づくり―準備編
自分で家を創るということ まずは土地を見つける インフラの考え方を変える 設備と家を分離させる
5 巣づくり―実践編
壊れても建て直せる家を 隅田川の鈴木さん 多摩川のロビンソン・クルーソー 代々木公園の禅僧 都市型狩猟採集生活の目的
6 都市を違った目で見る
机の下の空間 六十年代カルチャーの衝撃 建築家なしの建築 〇円ハウスとの出会い 見えない空間を感じ取る 今和次郎考現学 猪谷六合雄のモバイルハウス 都市型狩猟採集生活というアイデア 新しく都市型狩猟採集民たちへ

たとえば第一章の目次にある「衣服は日々実る」では、ホームレス生活をしながら衣服をゲットする方法が語られます。燃えるゴミの中にいくらでも服は混ざっているし、それは靴も同様だという。ゴミなんか漁れないと言う人でも、教会に通えばどちらもタダでもらえるというのだから、「日々実る」という表現もあながち間違いではない。

衣服も靴も、自然の摂理に従って実るのではなく、人間の摂理に従って実っている訳だが、人間もまた自然の摂理に従っているのだから結局自然の摂理によって実っているのである(混乱してきた)。これはもう、<都市の幸>といってしまっても相違あるまい。その<都市の幸>を狩るのが、都市型狩猟生活者というわけです。

同様にいくらでも手に入るのが「食事」だという。路上生活になった時に真っ先に困るのは食事だろうと思っていたのだけれども、どうも都市に限って言えばそうでもないらしい。たとえば台東区では、毎日決まった時刻に朝ご飯と昼ごはんが炊き出しといって支給される。だからこそ東京都のホームレス達の間では合い言葉のように「とりあえず台東区へ向かえ」と言うらしい。

本書は他にも金を稼ぐ方法、おいしい食事にありつく方法、段ボールハウスの作り方と、「狩猟生活」を営む為に必要な技術の数々が見ものですが、残念だなぁと思ったのが、たくさんのホームレスにインタビューをし、その方法論の一つ一つに注目しているのは大変結構なのですけど、全部伝聞なので何の信用性もないんですよね。

人に「都市型狩猟生活はなんて素晴らしいんでしょう!」と数々の例を挙げて説明しているにも関わらず、自分はこれ恐らく、自宅で悠々とタイピングしているんですよね? 人にオススメする前に自分でやってみたらいいんじゃないのかな、都市型狩猟生活。と思うんですけどね。そこだけちょっと残念でした。

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

ゼロから始める都市型狩猟採集生活