あらすじ。(Amazon.co.jp: 不動カリンは一切動ぜず (ハヤカワ文庫JA): 森田季節: 本より)
すべての子どもたちが人工授精で誕生し、掌にノードを埋め込まれて生活する時代。人々はノードを介して情報や思念を交換する。中2の少女、不動火輪と滝口兎譚は授業の自由課題で小学校の遠足バス転落事故を調査し、死亡前の生徒の思念記録を偶然手に入れた。その記録に関わる大きな陰謀と、二人の家庭の事情が複雑に絡み、遂に事件は勃発する―大人世界の不条理に抗う少女たちの絆を描く、俊英作家の新世代青春小説。
ライトノベルで活躍していた森田季節さんがハヤカワで文庫を出していたので早速読んでみたのです。最初は真面目なSFだと思ってふんふんと読んでいたら、途中からSF関係ない神やら宗教やら神秘体験が入り混じれる空想バトル小説になってげらげら笑いました。
もし人類から性交がなくなったら、というシュミレーションとして、序盤から中盤にかけては普通に楽しく読みました。まず性交して子どもを残すシステムとしての夫婦は消え、みんな同性だろうが異性だろうが、個人だろうが3人だろうが4人だろうが関係なく子供を持つようになります。
当然性欲はたまるわけですが、【自慰行為促進法】とかいうのができるそうです。自慰行為をする為に必要な物とかに補助金が出るらしいんですけど、まるで地獄のような世界だなと僕などは思ってしまいます。
だって多分この人たち、自分の性欲を満足させるために変態的な道具を買って、変態的な自慰行為をやっているわけで、作中に成人男性が出れば出るだけ変態がひとり増えると言う寸法で、大変気持ち悪いなあと思いながら読みました。
ああ、でもしかし「誰もが子供を産めなくなる」というのは状況としては未来予測図として近いような気がしますね。こーんな記事までありますし→結婚・恋愛ニュースぷらす:森永卓郎氏 「アダルトグッズが進化し過ぎて非婚男性が増加した!」
シンプルな性欲処理ではやたらとアダルトコンテンツが充実して(おもにネットのおかげでしょう、これは)個人主義の行き着いた果てか否か、ついでに道具まで進化して、しかも今の日本人の年収的に、結婚して子供を育てることがなかなかきついと。
本書には経済的な理由からそういうことが起こっているわけではないですけれども、無理に現実に当てはめれば二人で子供を育てるのが経済的にキツイなら三人や四人でシェアしながら子供を育てるしかないというのはふむふむと思いました。
本書の主人公不動火輪も親が三人いますしね。
で、これ200ページぐらいまでは、ごくごく普通の、ちょっと説明過多だけどそれでも面白い小説として読めるのですが後半からわけのわからないとんでもな展開になっていくんですね。SF的なところからかなりオカルト方向に舵をとっていく。そしてその結果、何故か突然バトル小説のようになります。まあ何故かというその部分もSF的に行われるので、いいといえばいいのでしょうが。
あらすじに目を向ければ、途中までは話がなかなか動かず、終盤ではいきなり数々の問題が主人公が解決するまでもなく勝手に解決されてしまうのでまるでソードマスターを読んでいるみたいだった。これは褒め言葉でもあるし、けなしているともいえる。
あ、ちなみに主体となって動くのはみな中学生ぐらいの少女同士で、その世界観もあいまって立派な百合っ子になっております。百合小説としても、大変面白いのではないかと。
百合小説で思い出しましたけど、名前が火輪と兎譚とかいう読みづらさであるとか、はたまた百合小説であるとか、そして森田季節氏の最近出たばかりの前著『友達同盟』の表紙絵を描いたのが伊藤計劃氏の『ハーモニー』と同じ人であるということで、やたらと共通点があるなぁと思ったりしました。
そんなところですかね。
- 作者: 森田季節
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/09/30
- メディア: 文庫
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