今日駅で僕が、ぼんやりと電車を待って立っていたら、「こいつぁカモだぜ!!」とカモレーダーが反応したのか、よれよれの服を着たじーさんが近寄ってきて、「○○駅まで行きたいんだが、200円程貸してくれないですかね〜〜」みたいなことを言ってきた。貸してくれって、僕とあなたは絶対にもう二度と合わないだろうが、そういうのはな、貸すっていわねーんだ、日本語を覚えてから出直してこい、と思った。
僕は自慢ではないが割と人からみるとうかつ、あるいはアホですぐにひっかかりそうな人間に見えるようで、しょっちゅう色んなところで詐欺まがいの事をしかけられるわけだけれども、今回も「あ、こいつはカモだな」というロマサガの電球ピコーンのようなものが見えたのでかなり身構えていたのでそういう申し出が来たこと事態は驚きではなかった。
正直言ってあまりお金持ちではない僕は当然200円を渡す気など毛頭ないわけだけれども、脳裏にふとよぎったのは村上春樹のつい最近どこかの雑誌で発表していたコラムだった。うろ覚えながら要約すると外国の、マックか何かが併設してありショッピングモールを歩いていたら、物乞いが「ハンバーガーとコーラを飲みたいんですが、4ドルぐらい恵んでくれませんか」と言ってきたという。
村上春樹が驚いたのは、「ハンバーガーとコーラ(この二つじゃなかったのは確かだけど、よく思い出せない。何らかの具体的な商品名)」が食べたいので「4ドルだけ」恵んでくれないかと言う、その「具体性」にあったという。普通の物乞いは4ドルくれだとか10ドルくれだとかしか言わないが、その物乞いは具体的に商品名を挙げた。
で、うろ覚えすぎてここで村上春樹がその物乞いに4ドル渡したのか渡さなかったのか、覚えていないのだけれども、どちらにせよ「心動かされた」とは書いていたはずだ。要求が具体的に想像できたので、より心動かされたのだ。ここまで書いて思ったけど、この話題は前にもこのブログで出した気がする。まあ全部読んでいる人なんていないからいいだろう。
そんな事を、物乞いに、○○駅まで行くのに足りないから、200円貸してもらえないか、と言われた時に思った。まあ、だからといって僕はその彼に、200円貸しはしなかったが。「くれませんか」と素直に、本音を言っていたら、もう0.5秒ぐらい迷ったかもしれない。結局、「駅員さんに言えば貸してもらえますよ」「そうか〜〜」と簡単なやりとりをして、別れた。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/09/29
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 26人 クリック: 656回
- この商品を含むブログ (195件) を見る