日本にいると、ウェブであまり世界を感じる時って、ないんですよね。僕だって日本語のサイトしか見ませんし、たまに動画サイトや日本の翻訳サイトで紹介される海外の面白記事を読むぐらいで、せっかく自由に海外の情報へとアクセスできるのに、意識しないうちに日本の、日本語のコンテンツばかり見ている。
それだけ言語の差が大きいということでもあり、もう一方で日本語のコンテンツが十分に揃っているということでもあります。しかしそれではもったいないなぁ、と本書を読んでいたら思わざるをえません。本書『ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命』で紹介される、このウェブ時代における「学び方」「知へとアクセスする方法」です。
たとえばマサチューセッツ工科大学では、全ての講義で使われている教材を、無料で公開しています。このような試みを「オープンエデュケーション」といいます。マサチューセッツ工科大学に続いて、より洗練されて適した形に授業を構築しなおし、ウェブで公開するもの、個人で授業をウェブで公開するもの、そのような例が次々と紹介されます。多すぎてここでは書きませんけれども、「え、こんなに?」と驚くほどの量です。
今「オープンエデュェーション」に注目が集まるのも、当然かもしれません。「次の10年」でインターネット人口が現在の19億人から約11億人増えて、計30億人になることをシリコンバレーの企業群は戦略の前提として動いていると言います。新たに増える11億人がどこから出てくるのかと言えば、発展途上国からです。
その結果、何が起こるのか。「学習のフラット化」がそれだ、とそういうことでしょう。発展途上国に居ながらにして、先進国と同じ授業、同じ知識を得ることが出来る。日本にいる限り、奨学金などを駆使すれば学ぶ機会を得ることはそう難しいことではありませんが、それは日本だけの話です。
学ぶ機会を得ることが難しくないことが、日本にいるとオープンエデュケーションの波が聞こえてこない理由の一つかもしれませんね。
誰もが自由に学べるようになる時代──、人類の知の底上げ、といってもいいでしょう。未来予測科学者のレイ・カーツワイルが提唱している特異点(シンギュラリティ)の概念では、これから先ムーアの法則のように、技術は進化すれば進化するほど進化の速度が速まるとしています。
そうなった場合に、20年後には今からは想像もつかないほどの技術的変化が起こっているというのですが、ウェブの出現によって科学技術と共に、人間の能力も、底上げされていくのかもしれません。取り残されない為には、学ぶしかありません。
ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)
- 作者: 梅田望夫,飯吉透
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/09/08
- メディア: 新書
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