「つながり」「ネットワーク」といった単語から、ツイッターやらインターネット関係の分析をした一冊なのかな、と思っていたのですが予想は外れ。本書でいうネットワークとは単純にインターネットに限定されるものではなく、「物と物」全ての関係性を表している単語なのです。
具体的な例を挙げれば、僕達の人間関係もネットワークの一種ですし、高速道路、送電網、企業間取引、あるいは今夜の献立の一覧における関係性、言葉の繋がり、こうして適当に上げてもわかるように、この世に存在する物には全て何らかのつながりがあり、ある意味では全ての分野を隔てる学問でもあります。
本書『「つながり」を突き止めろ』の「はじめに」の章題は「ネットワークの怖さと魅力」とあります。sの意味するところを、簡単に説明してみましょう。
「つながり」を知ると言う事は、対人関係のみならず国家間、犯罪者のあぶりだし、あるいはエイズの調査からインフルエンザの感染拡大抑止まで、強力な武器になります。エイズやインフルエンザの感染経路が完全に把握できていれば蔓延が防げますし、犯罪者同士のつながりが判明していればかの9・11が起こることもなかったかもしれません。
そうはいっても「つながり」を知ることは容易ではありません。誰も自分の携帯メールを人に見られたいと思わないし、特に秘匿したがる関係性も多々あります(昔イジメてたとか、性的接触とか)結婚している人たちでさえ、自分の交友関係を全て開示することは稀でしょう。
何故これ程までに関係性を秘密にしたがるのか?
恐らく、「関係」「つながり」こそが、その人にとっての本質、あるいはそれに近い嗜好、信条、行為を現しているからではないかと思います。誰でも独りで生きている訳ではなく、生まれついての傾向がその人の一章を決めるわけでもなく、大なり小なり周りで関わっている人たちが影響している。だからこそ「つながり」を知られることは本質に繋がる部分であり、戦略上知られると多大な影響を被ることがあるが故に人はそれを秘匿しようとするのではないか。
例をあげれば、若い女性向けのファッション雑誌のアンケートで「彼氏ないし配偶者のケータイをのぞきみしたことがありますか」という設問を出すと、全年代に一貫して返ってくる答えは「見たいが、見られるのは嫌!」という、好奇心と防衛本能のせめぎ合いだそうです。
ネットワーク、関係性を知識として支配すれば、人々を、組織を、社会を制御する可能性を持ちます。これが、ネットワークにおける怖さと魅力と言えるでしょう。ウェブの発達により、人間の関係性はより可視化しやすくなり、それだけ操作し、支配されやすくなっていて、「つながり」の重要性は日々増していきます。
このようなネットワーク時代をどう生き抜いて行けばいいのか。その答えは別に本書には書いていませんけど(入門書だからね)「つながり」が重要なのだ、と認識する為にオススメな一冊。
「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)
- 作者: 安田雪
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/10/15
- メディア: 新書
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