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貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム (新潮選書)

貨幣が生まれた4000年前から、現在の貨幣に至るまでの流れをざっくり解説した経済史としても非常に面白かったですけど、「これからの貨幣の話をしよう」的な面白さもあって満足です。あんまり色々なことを一気に説明するので読みづらかったですけど、全部説明しようとしたらそうならざるをえないのでしょう。

面白かったところを幾つか。「なぜ経済成長していない日本の円がなぜ強いのか」という疑問に対して、「異様なほどに恵まれた顧客基盤の上に胡坐をかいている独占企業の株価の強さのようなもの」と返答するのは非常に面白かったです。

日本人はよほどのことが無い限り日本を脱出して海外に住もうとしてスイス銀行に金を預金したりしないし、税率の引き上げにも恐らく文句ぐらいは言うかもしれませんけど我慢して従うでしょう。

決して円を見捨てないんですよね。貨幣の上がり下がりが単純な人心心理によって決まるのではなく、「国民性」によって、むしろ大きな差が出るという視点が面白かったです。

貨幣史は面白かったのですけれども長大で要点が掴めないので「未来」について。経済について詳しくないのでちゃんとは説明できないんですけれども、本書では「貨幣」には危機に強い貨幣と、平時に強い貨幣がそれぞれ存在するといいます。

著者の基本認識はまず一点、「現在の貨幣制度は、成長とインフレを前提にしている」そして二点目「現在、世界的に成長が止まっている」最後に三点目「だから、新しい貨幣制度が必要とされている」

二点目の根拠として先進国限定で、人口の世界的な減少さらに飛行機などの例をあげて、41年間人間の活動を一気に変えてしまうような、核となる発明はされていないというのがあるのですが僕はどうにも理解できない。他の部分で大きく成長しているからですが、まあいいや。

三点目の新しい貨幣制度として、「貨幣自体に金利をつけよう」と提案しています。今まではデフレで、消費を促そうと金利をほとんどゼロ近くまで抑えても、「ゼロ以下にはできない」ことがネックとなって、それ以上の消費を促すことはできなかったのです。

しかし貨幣に金利が設定され、一週間が経過するたびにその貨幣を使う為には表示額の千分の一の金額が必要となれば、貨幣の価値を維持するのに必要な総額は一年間で五.二%になります。つまりこれで年利「マイナス」五・二%の金利が設定できることになる、というわけです。

正直これがどの程度妥当性があるのかよくわかんねーですけど、よくわかんないなりに考えると「めんどくせーな」というところでしょうか。

僕がいいなと思ったのは、貨幣多様性について言及しているところです。本書のタイトルに『進化論』とついているのもこの部分で納得できます。生物が生き残る為に多種多様な、時には奇形さえも生み出して環境に適応させようとしてきたのは何が起こるのかわからない世界において、単一の形態でいることが非常に危険だからです。

貨幣も同じだ、というわけです。日本の貨幣が国の信用を基盤にする「円」だけではなく、株式を基盤にする貨幣や地域通過のような貨幣だって流通していいはずです。みんながみんな勝手に貨幣を創りだし、創りだした貨幣の便利さを競い合っていけばいいのです。

やっぱりこの説にもどの程度の妥当性があるのかよくわかんねーですけど、よくわかんないなりに考えるとこっちは「面白いな」と思いました。

貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム (新潮選書)

貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム (新潮選書)