『海獣の子供』で有名な五十嵐大介による、単行本描き下ろし漫画。描き下ろしという形式が珍しかったのと、いつもいつも長い漫画ばかり読んでいるのに疲れてたまにはコンパクトにまとまった良作を読みたいと思って手にとったのが上巻が発売したばかりの3月。世界規模で展開していく大味なストーリーに、度肝を抜く絵の数々、そしてラスト。わくわくしながら六月末に発売されるという下巻を待っていたのですが、延期をし、ついに先日発売されました。
あらすじとしては──どこまで語っていいのかわかりませんな。というかあらすじを説明するのが非常に困難です。明確な主人公はおらず、世界各地で同時多発的に様々な出来事が起こっていく。その際にキイワードになるのが、"猿"です。いにしえより各地で起こってきたバラバラのように見える現象が、すべては猿で繋がっている。
うーんそれでなんか、すげー猿が二匹いて、世界の秩序をこの二匹のパワーバランスで保っていたのですけど、今回わるーいやつがパワーバランスを破壊して世界をぼっこぼこにしてやんぜしようとするんですね。それを止めようとする人たちと、世界をぼっこぼこにしてやろうとする人たちのお話です。基本的には。
あー何を書いてもネタバレになるんでもうあんまり書きませんけれども、絵が持っているイメージ力が凄いですね。見開きなんかもう、開いた瞬間にうぐうって呻いて動きが止まるような凄さ。上巻のラストとかね、結構見たらびっくりすると思いますよ。「うおっ」って。絵について語るの難しいんであんまりうまく言えないんですけど……。
お話で凄いのは、やっぱり「ここまで話を広げてくるのか」っていうわくわく感ですよ。何しろ上下巻なわけで、それ程の話を詰め込めるわけじゃないんですけど、余裕で人類終末とそれを防ごうと奮闘する人びととか書いちゃう。しかも結構真面目に。
最後の結末は「え、ここまで散々ひっぱっといてそんなんでえーの?」っていうぐらい、結構拍子抜けな終わり方なんですけど、そこに至るまでの絵と、風呂敷の広げていく力はあっぱれ。魔術大戦が起こっているダビンチコードみたいな感じ(笑)わからないか。
そうそう、「黒魔術」が結構お話の核になっております。誰もかれもが魔術の使い手で、結界とか余裕で使っちゃいます。相手は超やべえ猿妖怪なわけで、こちらも対抗して超すげえ黒魔術で対抗します。個人的に良かったのは、この辺ですね。超やべえ猿妖怪の圧倒的な超やべえ感と、超すげえ黒魔術の想像をはるかに超えた力。
そしてその狭間であんまり役に立たない軍隊。この辺はなんか、戦隊物というか怪獣ものを彷彿とさせます。ノリとしては完全に怪獣映画なんですよね。それをダビンチコード的な無理やりな繋げ方で世界規模の異変とノストラダムスとかの預言をからめて、漫画にしちゃったのがこの『SARU』なんじゃないかなと。
さっぱりどんな話か伝わってないと思いますけど、これは一読の価値あり。
- 作者: 五十嵐大介
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