基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

デジタル時代の著作権

最近著作権っておもしろいな〜〜と思っていたのですが、本書を読んだらさらに面白くなりました。もちろん現状としては、あんまりいい感じではないんですけどね。改変しがいのある分野というか、色々問題が多く変わっていかざるを得ない分野なので、面白いわけです。

著作権がいったいいつから、どんな経緯で生まれたのか、というところから現代の著作権までの流れと問題点をざっくり語ってくれるので、僕のような著作権分野の本をまったく読んだことが無い人間にも大変わかりやすかったです。クリエイティブコモンズやライセンスのあたりは少々難しかなとも思いますが。

そもそも著作権が発生したのはいつ頃かというと、十九世紀、活版印刷技術の普及によって、であります。それまでは作品を大量に作ることもできなかったので、たとえば他の人がうへへーいパクって利益あげるぜーってこともできなかったわけです。

大量に印刷を行えるようになったことで、最初に物を発表した人のものが、比較的手軽にコピーできるようになってしまい、「最初に発表した人」の利益を護る為に、著作権というものは生まれたのですね。そうでないと頑張って苦労して新たな発見とか物を生みだしても、あっという間にコピーされて自分が発見する為に使った労力がまったく帰ってこない、ということになりかねませんから。そしてそうなったら最後、誰も自力で発見発明をおこなおうとは思わなくなります。

次第にその流れは、「国際問題」になっていきます。たとえば日本で発表された作品が海外で勝手に出版されても、日本国内で保護されたとしても海外までは手が回りません。そこで生み出されたのがベルヌ条約で、国際的な著作権法を作って海外に対しても著作権を発揮できるようにしよう、としたわけでした。

しかしそこで問題になったのが、現在の特許のように作った人が申請する形式には物理的に出来ないことです。何しろ船しかない時代なわけで、各国に申請する労力は凄まじい。そこでとられたのが、「発表された作品には自動的に著作権が投与される」というものです。

当時は割と合理的なこの方式ですけれども、このネット時代においての問題点は明らかだと思います。ネットにおいて誰もが気軽に作品を投稿できるようになった結果(たとえばツイッターのつぶやきでさえも)、誰のどんな作品にも著作権があるということになってしまい、権利は爆発的に増加し異常に複雑で簡単に著作権の侵害になってしまうような世界になってしまったわけです。

だいたいもうずっと昔のルールなんですから、変えちまえばいい話なんですが、それもうまくいかない理由が、しかも結構かなりいっぱいある。まあその辺は読んでもらうとしてそもそも現代の著作権の話です。問題があるのはわかっている、であるならば、どのような形態が現代の著作権については相応しいのか。

著作権というのは強化すればいいというものではありません。情報というのは、自由であれば自由であるほど「発展」という点にだけ目を向ければ社会にとってはいいのです。何しろどんな技術が発明されても、みんながみんな共有すればそれだけ時間が短縮され技術は加速していくからです。

しかし最初期の人のモチベーションも護らねばならない。だから問題は「自由化と保護のバランス」ということになります。これをたとえばベルヌ条約のように、全員に著作権を与えてしまうのではなく、「私は自由に使ってもらいたい。褒めてもらいたいだけだから」という人もいるでしょうし、「非営利なら使ってもいいよ」という人もいるでしょう。

大雑把にいえば作品にそういうタグをつけるのがクリエイティブコモンズというルールであるようです。また一方で、著者の個人的な考えでは、自分の権利を守ってほしい人だけが著作権に登録するのがいいんじゃないかと思っているようですが、僕もこれに同意しますねえ。同時に多様化した製作者の多様化した著作への思いを著作権に反映できるように、CCを併用していくのが、一番良さそうです。

また、そこで思考停止するのではなくやはりまだまだ「保護と自由化」のバランスについては考えていかなければいけないのだろうな、と思いました。ネット時代において、情報が自由化される意味は果てしなく大きいですからね。

大変面白い一冊でした。

デジタル時代の著作権 (ちくま新書)

デジタル時代の著作権 (ちくま新書)