おお、こりゃ面白い。なんか売れているみたいです。で、売れている新書って結構自己啓発書みたいな内容というか、誰でもわかるような単純なこと、「がんばれ!」みたいな。のしか書いていないのが多いわけですが、これはそうじゃなくて普通に内容が濃いですね。
「人口の波」で動くとはどういうことか。まずデフレの正体について。物価が持続して下がっていくことをデフレといいますが、これが何で悪いかと言うと、誰も物を買わない→物価が下がる→売り上げも下がる→→会社ヤバイ→ジリ貧まじヤバイ てな感じ? でしょうか。で、みんながみんな「景気がよくなればみんな消費するようになってデフレも止まる!!」っていうんだけど、そんなことないぜ、なぜならデフレは景気の変動じゃなくて人口の波によって動いてるからだぜ、というわけです。
「景気さえ良くなればみんながハッピーになれる」とみんなが信じている訳ですが、2002年から2007年まで続いた輸出主導の好景気の時でさえも、デフレはどんどん持続的に進行しているのです。凄い景気が良かったのに、物価は普通に下がって行った。それどころか現在でさえも、状況だけ見れば好景気なのです。輸出すればスイス意外の国には黒字を出していくわ、韓国や台湾、中国が経済発展してきたことによって彼らに対して物がばんばん売れる。
何故ダメなのかと言うと、生産年齢人口が恐ろしい勢いで減っているから、といいます。05-10年に、850万人を超える戦時中生まれの世代が65歳を超えました。そして同時にバブルを終えたころに生まれたちょうど15歳になる600万人ほどが、15歳を迎えるわけです。15歳から64歳までが生産年齢人口で、65からは働かない世代です
850万人抜けて、600万人入ってきた。250万人のマイナスです。これが何を生むかと言うと、極端な消費の減少。老人はお金を手放さないしお金を使う若者はガンガン減っていくのがデフレの正体だ、というわけですね。しかもこれからの10―15年で最大の人口を誇っている団塊世代がガンガン退職していくと、生産年齢人口が448万人減少しちまうわけで、まじやべえですね。
若者の○○離れというのが話題になるようになってもう長いですが、なぜそんなことが言われるのかと言えば昔と比べて若者の数が圧倒的に少ないからであって、若者が離れている訳ではなく、若者がそもそもいないのが問題、というわけです。わかってしまえばなーんだ、てなもんですが、「経済の好調不調は若者の数で決まる」という説には、わりと説得力がありますな。
敵が見えれば対策も立てられる。その対策の部分ですけど、もう書くのが面倒くさいので目次を引用しておきます。ちなみに本書は適当な内容ではなく、ちゃんとした数字を基にしたお話……だけど実際、そこまで経済に詳しいわけではないので、数字の焦点をずらされたり隠されたりすると、これが正しいのかどうかっていうのは正直判断できかねますな。検証は各自で。
じゃあじゃあ、そんな感じで。
第9講 ではどうすればいいのか① 高齢者富裕層から若者への所得移転を
若い世代の所得を頭数の減少に応じて上げる「所得一・四倍増政策」/団塊世代の退職で浮く人件費を若者の給料に回そう/若者の所得増加推進は「エコ」への配慮と同じ/「言い訳」付与と「値上げのためのコストダウン」で高齢者市場を開拓/生前贈与促進で高齢富裕者層から若い世代への所得移転を実現
第10講 ではどうすればいいのか② 女性の就労と経営参加を当たり前に
現役世代の専業主婦の四割が働くだけで団塊世代の退職は補える/若い女性の就労率が高いほど出生率も高い
第11講 ではどうすればいいのか③ 労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受入を 高付加価値率で経済に貢献する観光収入/公的支出の費用対効果が極めて高い外国人観光客を誘致!
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷 浩介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/06/10
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