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フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた

最近ソーシャル・ネットワークという映画が公開されましたが、僕はどちらかといえば文字で読みたいな、と思ったので同じような値段の本書を購入。その判断は多分間違ってなかったけど、どうしよう、映画も見に行きたくなってしまった。それぐらいフェイスブック創設者のマーク・ザッカーバーグは魅力的な……というよりかは、エキセントリックで眼が離せない存在のように書かれている。本書はそのマーク・ザッカーバグ、フェイスブックの伝記のような一冊。

現代における「世界を変える神話」と言えるかもしれない。善と悪を超えたところにある物語、といってもいい。善と悪がよくわからんくなってしまった社会で、個人が信じる方向性へと向かって世界を変えることができる時代が現代だ。ただその道が決して険しくないことが、本書からはうかがえる。訴訟、言語の壁、たび重なる買収、チームのまとめ方、収益化、どれをとっても一筋縄ではいかない。

創設者であるザッカーバーグの破天荒さは読んでいて痛快さがある。自分の信じる方向へと突き進む姿勢は、慣習を破壊し、決して折れることがない。最初は20万ドルだった買収金額が、最終的には150億ドルという天文学的数字にまで駆け上っていっても決してフェイスブックを他社に譲り渡そうとはしなかった(その価値を信じていたからだし、買収されることによって自分のやりたい事が出来なくなることを嫌がった)。

そして世界に個人情報の共有化と透明性を持たせ、オープンな文化が世界にとっても良いことだと信じて、世界を変えようと邁進してきた。同じく世界を変えようとした企業に、世界中の情報を検索可能にしようとするグーグルがある。フェイスブックがグーグルに比べて優れているのは、グーグルが検索することが出来ていなかった人に注目したところにある。

グーグルは宇宙から地球をとったり、道端にある家や目的地を写真としてみれたり、ウェブ上にある全ての情報にアクセスできるかもしれないが「人間」の中身に踏み込むことはできなかった。フェイスブックがオープンかつ共有化可能にしたのはまさにその人の内面、考え方、ありとあらゆる情報だった。

話は元に戻りますけど、本書のどこに強烈に惹かれるのかと考えると、やっぱり「ザッカーバーグの人間性」という他ないのです。ギークで、自信家、理想は大きく人の言う事はあまり聞かない。とても子どもっぽく(人類は他の動物と比べて例外的に子どもの期間が長い。子どもの期間が長いと言う事は、知性の証でもある)純粋で、素直(のように見える)だ(要するに子どもっぽい)。

グーグル創設者のラリー・ページに「ラリーはフェイスブックを使っているの?」と聞いて「使っていないんだ」と答えられがっかりし「でもなぜ?」としつこく聞いたという話など、よくそんなに素直になれるものだと感心してしまうし、現在のフェイスブックの注目語が「ダサい奴になるな(もっと金を儲けるとか、みんながやれということをやれというだけの当たり前のことをやるな、というような意味らしい。)」というのも反抗心に満ち溢れていて子どもっぽい。

本書が面白いのが、これは大乱闘スマッシュブラザーズですか? というぐらいシリコンバレーのIT企業系有名人たちの名前が頻出することだ。ラリー・ページもそうだが、グーグルの幹部でのちにフェイスブックに移ったサンドバーグも当然出てくるし(グーグル本を読んでいていつも「なぜサンドバーグはグーグルを出て行くんだ! 戻ってこい!」と思いながら読んでいたが今では納得した)フェイスブックが拡大を始めようと社員を雇い始めた時のエピソードには驚いて笑った。

 コーラーが最初に採用したエンジニアのひとりはスティーブ・チェンという元ペイパルのプログラマーだった。チェンはほんの数週間いただけで、ペイパル時代の友だちと新会社をつくるといって辞めてしまった。なにやらビデオがらみの会社のようだったが、コーラーはチェンを思いとどまらせようと説得した。
「辞めるなんてとんでもない間違いだ。一生後悔するぞ。ザ・フェイスブックはすぐにものすごい会社になるんだ! ビデオサイトなんて掃いて捨てるほどあるじゃないか」
 しかし、言うことを聞かずにチェンはザ・フェイスブックを去ってビデオ・サービスを立ちあげた。それがユーチューブだった。

ブフゥー!! ユーチューブかよ!! しかしそれだけの凄い人材がフェイスブックには溢れていたのだ。そして今も溢れている訳だけど。すべてはザッカーバーグという圧倒的な才能から始まって、今も始まり続けている。側近が言ったとされる言葉の「人にはたいてい安定期や節目があって、のんびり祝福したり達成感を味わったりすることがある。マークにはそれがない」という言葉は本書を読んでいる限りでは正しいように思える。

何しろザッカーバーグは「われわれの今やっていることが、まだ始りに過ぎないということを、みんなに理解してもらうことは本当に大切だ」というのだ。フェイスブックは、この先何十年も価値をつくり続けていく会社であるし、フェイスブックは電話やガスや水道と同程度に「誰もに必要とされる公共事業」を目指している。人間関係についての公共事業だ。

その為にはクリアしていく課題が多くあるが(どこまでをオープンにするのか、情報をどのように保護するかなど)とりあえず、今のところは絶好調、といったところ。多少ひいき目にすぎるというかあまりにもザッカーバーグを偉大に書きすぎているんじゃないかと感じてしまうところもあるけれど、それはそれとして非常に面白かった。世界を変えてやるぜ!! という人におすすめ(そんな人がそうそういるとはおもえんが)

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)