基本読書

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モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

おもしろかったー。新しい時代の「モチベーションの保ち方」。モチベーション1.0では、人は生存のための行動を自発的に行う。ご飯が食べたくて狩りをしたり、セックスをしたがって配偶者を探したり。モチベーション2.0は報酬と処罰が効果的だと考え、「より多くの報酬を与えればより働くし、罰を与えれば行動は抑制される」という考え方。今はこの考えが主流です。。しかしモチベーション2.0の欠陥が明らかになってきている。だからこそ、モチベーション2.0の時代には無視されてきた新しいバージョンが必要なのだという。それがモチベーション3.0。これは報酬をもらえなかったとしても自分から創造したい、世界をよくしたいと考える動機づけのことです。

2.0の欠陥は数々の実験によって本書で明らかにされているけれども、シンプルにまとめると「今までは楽しんでいた創造的な行為でも、いったん報酬がもらえるようになると、次に報酬がもらえなくなった時に人は以前のようにその行為を行う事が出来ない」要するにいったん「あれをしたらこれがもらえる」といったやり方で動機付けをされると、次から「これをしてもあれをもらえないんだよな〜……」と考えてしまって(しまうのかどうかはわからんが)なんかやる気が出なくなり、結果的にパフォーマンスが著しく低下してしまうらしい。

これを読んでいて思い出したのが、内田樹先生がよく言っている「教育は経済合理性の文脈で語られてはならない」みたいなことで、「これこれこういう利点があるから勉強しなさい」というと、「等価交換する子どもが生まれてしまう」のです。「じゃあその利点はいらないから勉強なんかしないよ」と言いだす子どもが出てきてしまう。あるいは本書の文脈で言うのならば、その利点が得られなくなった時点で勉強のやる気なんてすっかり失われてしまうでしょう。「勉強していい大学に入って、そしていい会社に入る」と長らく語られてきたようですが、その最初の前提が崩れた時に子どもたちは勉強をしなくなったのかもしれない。

他に興味深い例だと、献血を有償にすべきかどうかという議論があります。血液は神聖なものなので、売買はすべきでないとする立ち場と、有償ならば十分な血液が確保できるのだからいいじゃないかという立場です。これについての実験が興味深いわけです。ある時、献血しようとしている153人の女性を3つのグループに分け、一つは献血は任意で無償だと伝え、二つ目には一人七ドルの謝礼金が払われる、三つ目には七ドルは寄付される、という内容だった。結果はどうなったのかというと、一つ目のグループは五十二%の人が献血を決断した。

二つ目のグループは従来のモチベーション2.0の考え方ならば献血率が高くなるはずだが。結果的には三〇%の人しか献血に応じなかった。三つ目のグループはなんと一番目とほぼ同数の五十三%の人が応じた。『金銭的報酬が利他的な行動を抑え、善行を積みたいという自発的な欲求を「阻んだ」からだ。』

ただ常にこのようなモチベーション2.0のやり方がダメになるわけではないといいます。当然、そんな欠陥製品だったらここまで普及しなかったわけですしね。2.0が効果をあげるのはどんな時かといえば、単純な労働作業をする時だそうです。「つまらない」と誰もが感じる仕事をしなければならない時に、金銭は動機になりうる。

また単純な労働作業でなくとも、まったく報酬が必要でないのかと言えばそれもあり得ません。ただ意欲を求めようとして安易に報酬を多く与えるとき、人の意欲は最もよく失われるのです。これからの先進国では単純労働はガシガシ減っていって、モチベーション3.0を必要とする創造的な仕事が増えて行きます。そのような時代の新しい人間の生き方といえるかもしれません。

あとこの本めっちゃ親切でした。最後の方にTwitter用の短いまとめや、各章のまとめ、参考文献の短い書評からディスカッションの為の質問まで。あと「どんな方法ならモチベーション3.0の理想に近くなるか」という例で幾つも企業のやり方が上げられているうーんしかしどうかな。そのあたりは、ちょっと信憑性にかける、と思う。

それにしても真面目に本を読者の為に書こうと思ったら本書ぐらいやらないといけないんだな〜〜。徹底して読みやすく、読者のためを考えられてつくられている。がんばってつくりすぎてちょっと胡散くさいぐらい。

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか