基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

デザインの骨格

凄まじい。世界の見方を新たに一つ与えてもらったような、それぐらいの衝撃を受けた。デザインとは一つの思想なのだと思う。本書はデザイナーである山中俊治さんのブログ(山中俊治の「デザインの骨格」)をまとめた物。読み始めるまでにこれがブログ本だとは知らなかったので少し面食らった。ブログ本というと「ちょっとクォリティが……」とか「まとまりが……」と思うことも多々あるからだが。

しかしそんなことは関係が無いぐらい楽しく読めた。とにかく一つ一つの記事が丁寧で、文章は氏のデザインした製品のように、無駄が無く洗練されている(感動すら覚える)。本書を読めばわかるが、デザインという言葉の意味は、とてつもなく広い。たとえば本。手に取った感触、重さ、めくりやすさ、文字の配列、文字自体、表紙、大きさ、文字の間隔、何から何までもがデザインの範疇だ。

最初にデザインは一つの思想なのだと思う、と書いたがつまりそれはこういうことだ。この世の全てのものは、デザインという観点から再構成可能である。つまり視点=思想だと思う。『人々が当たり前と思って見過ごしてしまうことに意味を求め、誰もがそう信じていることを確かめずにはいられない。それはわたしのデザインの源泉でもあります。*1この言葉の意味は深い。

デザインは物事を捉えなおす視点を与えてくれる。そしてデザインをする思想から再構成された物は、素晴らしい力を見せてくれる。たとえば氏はSuicaの自動改札機をデザインした。最初の改札機は、ちゃんと通れない人が半数近くに上ったという。カードを当てる場所がわからなかったり、どうやって当てるのかがそもそもわからなかったり。

氏はいろいろな形を試し、最終的に「手前に少し傾いている光るアンテナ面」が、多くの人が正しく当てられる形であることを発見した。この時のアンテナ面の傾斜は13・5度、僕は普段使っている自動改札を、特段不思議な思いもせずにピっと通っていたが、陰にはこのような「誰でもが自然に通れるようなデザイン」を作り上げる思考錯誤がなされているのだと知って、世界の見方は一変する。

デザインには、確かに凄まじい力がある。本書はその視点を、与えてくれるというよりかは、あれかな、著者の目を通して体感させてくれる、といった感じかも。それはとっても素敵だなって。ちなみに本書を知るキッカケは「デザインの骨格」はスゴ本: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいるのDainさんでした。タイトルと表紙を見てピンときて、書評を読まずに読んだのでこれでようやく読める!

デザインは、適切に機能すれば、いかなる場面いかなる場所においても、少なからず人を幸せな気分にする力を持っています。それは、ささやかな幸せかもしれませんが、その力は決して無力なものではありません。*2

デザインの骨格

デザインの骨格

*1:p.3

*2:p.245