基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

マルドゥック・フラグメンツ

今回はまとまった内容ではなく、思ったことを単純に書いていきましょう。フラグメンツということもありますので。

本書はマルドゥック・スクランブルシリーズ初の短編集。シリーズとしてはマルドゥック・スクランブルが三巻、過去編にあたるマルドゥック・ヴェロシティが三巻出ており、これからマルドゥック・アノニマスというスクランブルのその後を書いたお話が出るようなのです。

だから本書はそのつなぎに出されたと言うのが一番ぴったりくるでしょう。今までどこかで書かれたシリーズの短編+アノニマスシリーズの予告編ともいえる二編が書き下ろされています。

とにかくこれが熱い!! 僕はすでに発表された短編はだいたい読んでいたのですが、恐らくこれって書き直しがされているのかな? ひょっとしたら読み手である僕が変わったのかもしれません。しかし特に最初に収録されている短編「マルドゥック・スクランブル"104"」とか、最初に読んだ時は普通に面白いな〜と思って、場面も幾つか印象的なところがある、優れた短編、といった感じだったのですが、今回読んでみてもうびっくりしました。

ぴったりな言葉が見つからなくて苦労するのですが、なんだか今までよりも「圧縮」されている感じがあるんですよ。文章に無駄がなく、最適な言葉が選択されている。それは無駄がない描写というよりかは、隙間なくばっちり全部の文章がかっこいいんですよ。どの会話をどの部分で切り取っても最高にクールです。もともと会話文からして頻繁に韻を踏み、メタファーを多用していたのですが…。

短編という形態のせいもあるかとは思いますが、ぎゅっと詰まっていて、以上のようにクールです。今一番かっこいい台詞の応酬を書くのは間違いなくこの冲方丁だと本書を読めば結構な人が同意してくれるでしょう(笑)

そしてなんといってもアノニマス! 本書には冲方丁先生が受けているインタビューも載っていて、そこでアノニマスについてこのように語っています。

冲方 もうイメージはできているんです。ダンテの『神曲』は、地獄編、煉獄編、天国編とあるじゃないですか。地獄編が『ヴェロシティ』で煉獄編が『スクランブル』。そして天国編が第三作である『アノニマス』です。マルドゥック市で栄えている富裕層の犯罪を描きたいと思っています。

得意げに引用しておきながらダンテの『神曲』読んだことが無いのでどのような意味なのかはさっぱりわからないのですが…! 短編を読んだ感想とこのインタビューの感じではどうも、マルドゥック市自体を書くことになりそうですね。

否が応もなく犯罪が起こってしまう「都市」、都市のいちばんの条件っていうのは、これは個人的な考えですが「匿名性」だと思うんですよね。お互いにお互いの事をよくわからない不特定多数の人間が、都市には生息している。

これだけ多くの人間が都市には集まっていながら、お互いにお互いを知らないで生活しているという状況が、都市の定義なのではないかと思います。そしてネット上を見ればわかりますが、匿名性というのは人の攻撃性を発露させることもある。

マルドゥック・アノニマスアノニマスは「匿名」という意味の形容詞なんですよね。都市をテーマにして「匿名」を書くことはどうやら間違いが無さそう。何にせよ早く続編が読みたくて仕方がない状況。まったく、天冥の標シリーズもあるし、早川文庫にはしばらくお金を落とし続けることになりそうです。

マルドゥック・フラグメンツ (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-11)

マルドゥック・フラグメンツ (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-11)