基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

1秒もムダに生きない 時間の上手な使い方

最初本屋でこの本を見つけた時は「またこの世界にクソみたいな本が一冊産み落とされてしまった」と悲しい気分になるぐらい僕はこういう「時間管理系」というか「ビジネス書みたいなもの」が嫌い。なのですが著者を見たら「岩田健太郎」。『予防接種は「効く」のか?』は素晴らしい新書でした。あの本を書いた人ならクソみたいな本ではないだろうと思い読んでみたのです。

内容に関して言えば岩田先生の本業はお医者様でありこのような時間管理は本業ではないので、まあそこまで「時間管理」といった点で新しいきらめきが読めたわけではないのですが、しかし言っていることには非常に納得できました。思った通り良い本です。押しつけがましくない。成功体験を押しつけない。知見のささやかなおすそわけをする。それが出来ている本って結構少ないと思います。

冒頭から頼もしいお言葉。

というわけで、「○○をやればうまくいく」的な本を読んでも、あまり役に立たないのですね。本書のテーマは時間の使い方、ですが、「○○をすればうまくいく」的な本を読むこと自体が、ひとつの時間の「無駄遣い」です。

成功体験を語り、「私のようにしろ、さすれば救われん」という方たちが成功した理由はその人が過ごした状況とその人の周りの人の性質とが奇跡的に合致した結果に過ぎず、「こうすれば成功する」と人が語る時大抵それは「私はたまたまこう決断した結果うまくいった」という事に他なりません。

というわけで本書に書かれている方法も万人に通用する方法ではありませんと注意書きが書かれています。誠実。内容は「プライオリティー・リストは作るな」「To do listは作らない」「三日坊主はかまわない」「5年先、10年先の「目標」を立てない」とわりとよくあるタイムマネンジメイト系の本とは真逆のことを言っています。

もちろんプライオリティ・リストやTo do listを積極的に使っていきたいと言う人はそれを実行していけばいいと思います(恐らくその方が効果が上がるでしょう)。しかしそのような方法に疑問を持つ人がいれば、本書は恐らく「我が意を得たり!」という一冊になるのではないかと思います。

あと半分ぐらい「エッセイだろ」とつっこんでしまいましたが、エッセイ的な部分がまた面白いですね。第二章では「時間を慈しむ」として、ゆったりと時間を過ごす方法を紹介するのですが、好きな落語について語ったり音楽語学歩くと趣味について語り倒しています。それもうただの日記だから!

第1章 時間を削り取る、時間を作る(時間を大切にするキャラ
僕が時間を大切にするようになった理由
自分を打ちのめしたイギリスでの経験 ほか)
第2章 時間を慈しむ(時間管理術のピットフォール
テレビ・新聞のない生活
新聞・テレビにしがみつくことの危険性 ほか)
第3章 私の時間は何ものか(時間とは何か
時間と有限な命
挫折も停滞も回り道も ほか)

1秒もムダに生きない 時間の上手な使い方 (光文社新書 525)

1秒もムダに生きない 時間の上手な使い方 (光文社新書 525)