基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

響きの科学

当然ながらこの本の良い部分はすべてわたしの手柄であり、悪い部分は誰かのせいにしたい。できれば、何キロも離れたところに住む、いけ好かないやつのせいに。しかしあいにく、こんなふるまいをすると非難されるだろうから、大勢の方々の力を借りたと正々堂々認めた方がよいだろう。

良い本だった。
音楽って身近な事なのにその性質はほとんど知られていない。
いやもちろん身近な事なのに、それがどのようにして出来ているのかがよく知られていない物はいっぱいある。車とか電車とか。

ただこと「芸術」に限った場合これだけ多くの人が日々を楽しませてもらっているのに、なぜそれが楽しいのかを多くの人が知らないのは少し不思議ではある。いや不思議ではない。なぜなら音楽がどのようにして空気を震わせて、結果的に僕たちの気分を昂揚させてくれるのかというのは非常に複雑な話だからだ。

本書の第一に優れた点はわかりやすいという点だ。少しでも油断すると極限まで眠くなりそうな話を優れた音楽のように緩急をつけ、盛り上がりを設定し、重要なフレーズは何度も繰り返し、懇切丁寧に説明してくれる。また著者の文体がかなり笑える出来に仕上がっていて音楽関係なく読んでいて面白い、それもまた難しいとすぐに投げ出してしまいそうな音楽の成り立ちを読んでいく上で助けになる。

音楽について学ぶのは思ったより楽しかった。なにしろ今までずっと音楽を聴いてきたから、よく見知った友人の内面を覗き見ることが出来たような楽しさだ。しかもその友人は人間ではないので「自分が凄く嫌われていた」みたいなショッキングな事実に悲しむことはない。

 わたしの目的は、音楽家でも素人でも、読者のみなさんに、まさに根本的なところで音楽を理解することが可能であると伝えることだ。影がどのように作られるか、遠近法がどのように作用するかという知識があれば、絵画をいっそう深く楽しむことができるのと同じように、ここまで不快レベルで理解すると、音楽からいっそう大きな喜びが得られる。音楽についてよく知れば知るほど、そこから得られる楽しみが減ると心配する人もいるが、本当はその反対である。精巧な料理がどのようにして作られたのかを知れば、それをいっそう深く単能でいるようになり、しかも、そのおいしさは変わらない。

読んで良かった。

響きの科楽

響きの科楽