基本読書

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最新脳科学でわかった 五感の驚異

SF作家の円城塔先生がこれはすごいと書いていたのを読んで、読んでみた。
脳科学系の本は数多くあるが、僕が読んできた中でも屈指の出来。この本自体で新しい知見があるというわけではないが、ばらばらにちらばった脳に関する実験とその結果の数々を一つ一つ丁寧に説明してくれる。

たとえば顔。人間は相手の顔から驚くほど多くの情報を得ているし、しかも見ることができない自分の顔が、自身の感情にまで影響をあたえることがわかっているという。ペンをくわえてひとこまマンガを読んでもらい、それぞれどの程度面白かったかを得点付けてもらう。ほとんどの被験者がひとこまマンガを面白いと感じたのは笑った表情になるようにペンを加えた時だったという。僕は最近人から「君はいつに半笑いだよね」となかなかショッキングなことを言われたが、半笑いでいることは毎日を楽しく過ごすためにいいことなのだ!

においの実験も面白かった。肉を二週間食べ続けるグループと、一切食べないグループに分け、脇の下の匂いのサンプルを女性グループに嗅いでもらった(この女性グループはそれが脇の下の匂いだと知らされていたのだろうか? もしそうだったらなかなかの剛の者たちだが……)。その結果肉を食べ方の好感度、性的魅力度ともに低い評価を得た。少なくとも匂いでつまづかないためには、ベジタリアンでいたほうがよさそうだと思える実験結果である。ま、匂いが人間の魅力のうち何%ぐらいを占めるのかがわからないからそんなこといってもしょうがないけど。

僕らは特に努力しているわけでもないのだが、この五感という強力なツールを自然に使いこなしている。そしてこの強力なツールは、使い方を意識することでさらにうまく使いこなすことが出来る。五感を意識しないで使っている僕達は普段超強力な武器を持っているのにも関わらず効果的な使い方をせずにブンブンと振り回しているだけだ。というか、意識しなくても使えてしまうぐらい高性能なツールが五感なのだといえるのか。

本書を読めばわかるが五感というのはそれ単体で効果を発揮するものではない。たとえばにおいの実験で、ベジタリアンの方が肉を食う人間よりにおいの性的魅力度が高かったからと入って、肉を食わなければモテるわけではないことが当たり前のように。すべての五感は入り交じって発揮される。

たとえば食べ物飲み物。普通のジュース類を、本来の色が見える状態で飲めれば100%に近い確率でそれが何味が答えられる。しかし、色を見えないようにして答えてもらうと、正答率が20%になってしまうのだという。飲食に関して言えば、舌で味わう前にまず眼で味わって、おいしさをある程度決定してしまっている。しかもそれだけではなく、匂いが味に大きく関わっていて、食べ物の味の80%は匂いで決まるという。

知覚とは基本的に五感が入り交じった多感覚なものであり、たとえば雨が降る、人が笑うといった単純な事象に対しても様々なパターンの感じ方がある。だからこそ世界をこれだけ多彩に感じることができるのだろう。本書が伝えるのは、ぐちゃぐちゃに入り交じる五感は整理し、それぞれ能力を高めていくことができるということである。それができたら、世界はもっと複雑な姿を見せるだろう。

最新脳科学でわかった 五感の驚異

最新脳科学でわかった 五感の驚異