デザインとは何なのかといった基本的なところが本書を読んでようやく腑に落ちた。
たとえば本書では何度も出てくるTwitterのアイコンの話。
このアイコン、結構自分の好きなキャラクタ、自分のうちの犬なんかにしている人が多いと思います。が、たとえ軽い気持ちで選んだものだとしても、読む側からしてみればそれは常に発言と一緒になって流れてくる絵なわけです。
そこで、「猫のアイコンではダメな理由」というものが語られます。
アイコンとは「膨大な情報(Tweet)」の中から「一瞬で誰が誰かを見分ける」為に必要な物です。アルファベットの組み合わせがずらずら並んだ中から特定の組み合わせを見出すことは至難ですが、アイコンならば容易です。
しかしその「個人を特定すべきアイコン」が「どこにでもいるような猫(たとえ飼い主にとっては唯一無二でも)」で「無造作にとられた雑な構図」だった場合、「これは誰誰である」という情報が受け取れない可能性がある。だからこそ猫(犬でも)のアイコンは辞めた方がいい、というわけです。
誰かがつくったもの、何かに似ているもの、つまりアイデンティティとして独立性を保つのが難しいものを安易にアイコンに設定してしまうことは「デザインやプランディングという知性」、つまり「あなたらしさについての差別化」に対する無頓着さをさらしているのと同じ事です。
まあ僕は正直Twitter程度であればアイコンなんて猫だろうが犬だろうがだいたい識別がつくような気がするんですけどね。デザインセンスが今のところない人間という証拠であるとも言えますが。ただここに書かれていることで重要なのは「そうか〜猫アイコンはダメなのか〜〜」という単純なことではないのです。
たとえば僕は今まさにビーグル犬のアイコンをTwitterで使っています(無頓着さをさらし続けている)。このアイコンで「今の年金制度は破綻しており、回避する為には制度を変え、徴収元として年金特別消費税を導入するのがいい。消費税ならば老人世代からも公平に取れるからだ。」
みたいな真面目くさったことを呟くとすると、かわいらしいわんこが年金がー増税だ―と言っているように見え、非常に違和感があります。これが真面目そうで50代ぐらい、ひげが生えた親父の顔写真アイコンで言ったら「おお、なるほどそういうものか」と思うかもしれません。
デザインとはつまり、アイコンの話だけで決めつけてあれなんですけど、目的を達成する為の戦略のひとつだと言えます。Twitterで自分の発言を聞いてもらいたければ、それ相応のふさわしい装いを身につけなければいけないのです。オシャレでも同じ。
だからデザインにとって一番大事なのは何より「目標」なのでしょう。目標があってデザインがある。戦略も立てられるようになる。おしゃれとかにも応用できそうな、幅の広い考え方。言われてみれば当たり前の話ですが、本書を読んで、ようやくそれを理解しました。
- 作者: ウジトモコ
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2011/09/20
- メディア: 新書
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