基本読書

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幸せな未来は「ゲーム」が創る

本書は500ページを超えていて膨大だがその骨子はシンプルですぐに説明ができる。

現実はひどく不完全で、ゲームは現実よりよほど完全で楽しい。
だから我々は「ゲーム」を「現実」に活かすことで「現実」をより完全な、楽しい、幸せな状態へとハッキングすることが出来る。

現実が不完全なのはゲームと比較してみるとすぐにわかる。世界で最も有名な「ワールドオブウォークラフト」というオンラインゲームに費やされたゲーマーたちの時間は合計593万年だという。もちろんこのゲームをプレイしている人たちは誰かに強制されてやっているわけではない。自発的に自分の時間をこのゲームに注ぎ込み続けている。

どんなにゲームがうまくなろうとも現実に何も繁栄されないにもかかわらずに、だ。それはなぜだろう、というのは本書のテーマのひとつでもある。

ゲームでは偉大な目標が与えられる。成功の見込みがあって、適度な難易度のミッションが与えられ、成功すると報酬が即座に与えられ、評価される。誰とでもすぐに繋がることができ、持続的な楽しみが与えられる。現実では決して味わえない、1000vs1000の戦争といった、大規模な他の人間との協働を行うことが出来る。

一方で現実はゲームに比べて簡単すぎる。現実は憂鬱にさせる。現実は非生産的で成功の見込みが薄い。現実はつながりがなく平凡だ。現実は参加しにくい。現実はまとまりがなく分裂している。『でも、少なくともひとつの決定的に重要な点で、現実はゲームよりよいものでもあります。現実は私達が実際に歩む路だということです。』

ヘロドトスが書いた『歴史』にはリディア人が食糧不足をいかにして乗り切ったかが書かれている。膨大な食糧不足が国を襲ったさい、この飢饉を乗り切るための計画として、一日はゲームに没頭して空腹を紛らわせ、その翌日は食事をしてゲームを控えることにした。この方策で18年の飢饉を乗り越え、サイコロとお手玉、ボールといった現代に通じるゲームを考案した。

最初のゲームからして、それは単なる現実逃避の手段ではなかった。まずもって現実を少しでもましな、良いものにするための手段だったのだ。

本書が語る「幸せをゲームが創る未来」で主軸になっているのは「テレビに向かって一人没頭するゲーム」よりかは、「現実に起こっていることを問題にして、生身と知恵を駆使して解決を測る」未来と言える。これは最近特に話題な「モチベーションをどう管理するか」という問題に繋がっている。

天才とは蝶を追っていつのまにか山頂に登っている少年であるとジョン・スタインベックは言いましたが、世界に何千万人もいるゲーマーはまさにこのような「天才的な」特質を発揮し続けているのだ。それを「どうにかして現実に役立てられないか」というのが本書である。今年最も重要な一冊かも。

30近い色々なゲームが紹介されていて、「面白いゲームが知りたい!」っていう人にもおすすめ。半分ぐらい現実で行うゲームだけど……(笑)。僕もどれかやってみたいな。

幸せな未来は「ゲーム」が創る

幸せな未来は「ゲーム」が創る