基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

私たちは進化できるのか

新書で長沼先生は最近本をたくさん出しているからどうだろうな〜と心配だったけどこれはとっても良かった。長沼先生の生物観が一冊にまとまったものなのだ。いくつかの前提があった上で(まあその前提が本論なんだけど)結論として「私たちは進化できるのか?」に対する結論へと導いている。要するに

1.人間は地球システムにとってちっぽけな存在である。
2.地球は恐らくもうすぐ地球システムの変動によって大規模な氷期に襲われる。
3.氷期に襲われた場合文明は崩壊し世界人口は1億人程になる。
4.我々は進化しなければならない。

本書の大筋としての論理はだいたいこんなところだろうか。もちろん枝葉として地球にはこんなところにも生物がいるんだよ、生物って凄いんだよ、っていう話とか生命の本質は渦であるという生命論が間にあってこれも面白い。

というか4章『生命とは渦である』は説明が短すぎて大筋は掴めたけど細かい所で何を言っているのかよくわかんなかった。ここだけで一冊の本にしてほしいなあ。もうあるのかもしれないけど。僕もあんまり読んでないからな。

それ以外の章については上にまとめた感じだろうな。この本は思いがけずすごい面白いんだけど、その理由は僕が思うに長沼先生が超ロックな人だから。それに長沼先生のような極論的な考え方って今まで聞いたことないし、新しい。

先生の根本にある思想は「人間なんてただの一生物にすぎない」というものだ。そんなの誰もが当たり前じゃないかというのかもしれないけどそうじゃない。

科学的な主張はより「人間本位でない方の説が正しい」という一見ジョークのような判定方法がある。天動説が一番説明に適しているが我々が存在している地球こそが宇宙の中心で他の惑星は全部地球のまわりを廻っているのだという説。

しかしこれは周知の通り地動説通り太陽の周りを廻っているだけだ。でも昔の人は天動説を信じていた。だって人類は唯一知性を持っているし、他にそういうのはいないしだから超凄いからだ。超凄い我々がいる地球はだから宇宙の中心なんだと考えていたんだ。誰もそれに異を唱えることをしないからおかしいことにも気が付けない。

でも科学の世界ではちゃんと大抵人間本位な説は反論され、そのたびごとに人間の宇宙的地位も下がり続けてきた。この偏見はガリレオの時代だけではなく、今でもいたるところにあるのだろうと思う。地球温暖化がCO2の原因というけれど、実際本当にそうだっていう確たる証拠なんてない。

南極で氷が溶けるとかいうけど3000万年前はそもそも南極なんかなかった。二酸化炭素が今の数十倍だった時代だってある。二酸化炭素温暖化論だって要するに「人間は凄いから地球に多大な影響を与えているんだ!!」っていうくだらない思い込みにすぎないのかもしれない。

人間なんて地球からみたらちっぽけなものだ。まぎれこんだバグのようなもの。短い期間繁栄を謳歌しているに過ぎない。地球の生態系を確かに多少崩しはしているのだろうけど。でも過去には全地球凍結といって地球が凍りついて太陽の光をすべて反射した時もあった。海から酸素が消えて海の生物が96%死滅したことだってあった。そんな状況でも酸素のいらない生物は生き残ったし、寒くても生きていける生物は生き残って今も繁栄している。

人間が地球に与える影響なんて僕らが考えているほど大層なものじゃない。地球だけでみてもそうなのに、宇宙でみたらもっとちっぽけなもんだろう。ということを長沼先生は深海とか南極とかに生き続けて地球のもろの自然を受けて考えていったんだろう。自然の前で人間なんて無力だと。

そこで思考がとまったら過去の主張と同じだけど長沼先生がロックなのは「人間は無力だ」で終わらないところだ。少なくとも長沼先生は人間は失敗作だし凶暴だしほとんど猿と一緒だしダメダメと考えている。が、同時に科学技術があるし少しだけど協調性もある。少なくとも猿よりはある。なんといったって僕らは文明を創ったんだ。それに地球で唯一「生命について考えることができる生命」なんだ。

それは少なくとも誇っていいんだ。でも同時に人間なんて失敗作だし自然の前で無力だと思っているから僕らは徹底的にエゴイスティックになるべきだとも考えているんだろう。だから人間の活動でいくらでも他の生物なんか絶滅させちゃえよ、シロクマなんかいらねえよ、って書いちゃう。

そして人間に幻想も持ってないからいずれ来る氷期に向けて協調性のある遺伝子を発見してそれを種として選り分けて残して人類を進化させようとする。怖い。人類補完計画みたいなことをしようとする。僕エヴァは劇場版しかみてないから人類補完計画が何かしらないけど。めちゃくちゃ遺伝子いじって少しでも進化させればいいじゃんっていう考え方だ。

それは何よりそうしなければ今の文明が途切れてしまうからだ。今地球は間氷期という1万年の期間の中にいるがもうこの1万年の期間はタイムリミットだ。100年後か1000年後かわからないがもうすぐ全地球的に氷期がくる。今のままでは恐らく文明は崩壊するだろう、という危機感を強く持っている。

多くの人間たちの中で科学者だけが1000年、10000万年先のことを考えて思考することが出来るというのをどこかで聞いたことがある。実際は歴史学者だって出来るしいろんな人ができるだろうけど、でも長沼先生の思考は既存の枠組みには反逆しているように見えるしロックでかっこいい。

新書だが読み応えは抜群だった。これは結構オススメだ。

私たちは進化できるのか ?凶暴な遺伝子を超えて? (廣済堂新書)

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