基本読書

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宇宙から学ぶ――ユニバソロジのすすめ

最近重たい本ばかり読んでいたので、適当に新書で軽そうな本を選んで読んでみた。宇宙飛行士の毛利さんの書いたユニバソロジという独自の考え方の紹介。概略は二度の宇宙飛行を経て、宇宙から地球を見ることによって変わった生命観、地球観、宇宙観のまとめ。

ただこれ、正直いってかなりとんでもな内容でひいてしまう。生命のつながりを意識して生きることでこの地球上で生きる意味に気づいてより良く生きることに導いてくれるとかいうんだもんな。飛ぼうという意志があったからこそ恐竜は鳥へと進化したのではないか、飛ぶという今までにない能力を獲得するには意志がなくては無理なのではないかなどと言っているがとんでもない。

そんなこんなであまり科学的な態度とは思えないような内容も多いが別に良い。本書を読んでみたかったのは宇宙に行った時の体験談とか、NASAの話とか、ようするに宇宙飛行士ならではの貴重な話が知りたかった。ユニバソロジの考え方の基本、宇宙からの視点を導入することで現状の価値観をガラっと変えてしまうところには共感するがそれはどうでもいい。

個人的に面白かったのがリーダーシップとフォロワーシップの話だ。今の個人的に継続して考えているテーマはこれからのリーダーはどのような形であるべきかといったことだけど本書を読んで、最終的な答えはこんな感じなのかなというイメージが湧いた。アメリカというか海外ではよくリーダーシップ教育が話題になるが、NASAでは今リーダーシップと同時にフォロワーシップの養成にも力を入れているという。

フォロワーシップとは他人の言うことをよく聞いて合わせる能力で、この力がアメリカの宇宙飛行士には欠けていたといいます。たとえばアメリカの宇宙飛行士をロシアの有人宇宙船ミールに半年間ほど送り、帰還するとなぜか精神のバランスを崩してしまっていたとか。今までリーダーとして人に決断を伝えていればよかったのが、一宇宙飛行士としていったときに人のいうことをきいて慣れないロシア語の中で合わせる必要が出てきた時にその能力がなかった。

じゃあ人の言うことを唯々諾々と聞いていればいいのかといえばそういうものでもない。フォロワーシップとは他人に合わせる能力だが、合わせる必要のあることと、必要のないことはそれぞれが各自で判断しなければならない。そういうわけで、NASAで重視されているのはオープンマインドだそうだ。

宇宙飛行士はみんなそれぞれ科学者であるとか、医者であるとか、宇宙飛行士である前にプロフェッショナルな技能を持っている。でも当然万能であるはずがない。だからこそ自分たちが得意でリーダーシップを発揮できる部分と、よくわからない他の人に従う部分を区別する。訓練をする過程で宇宙飛行士たちはお互いの弱点と能力をすべてさらけ出していく。

誰もがお互いの能力の限界を知っているから「こいつの能力ではここまでしか出来ない」と、誰もそれ以上を要求しないし無理なことをやって破綻することもない。さらにその過程で自分の能力の限界もわかっているはずなので人に任せることも出来るようになる。NASAの組織論はお金も、生死も限界までかかっている事業なのでそれだけ現実性がある。

完璧な組織を目指すならやはりそうした誰もが得意分野ではリーダーで、それ以外の部分はフォロワーシップに徹するといった基礎的な能力が必要になってくるのだろう。完璧な組織が必要な場合なんてかなり限られてくるだろうけど。

ほとんど本書の主題とは関係ないところが面白かった。特にオススメはしません。

宇宙から学ぶ――ユニバソロジのすすめ (岩波新書)

宇宙から学ぶ――ユニバソロジのすすめ (岩波新書)