長山靖生『戦後SF事件史』:なんだ、ぼくが一回も出てこない事件史なの? - 山形浩生 の「経済のトリセツ」 Formerly supported by WindowsLiveJournal
すごいタイトルで笑ってしまったが内容にはまあ同意。大震災が起こった今こそSFの役割が云々というのは僕にも腑に落ちない。この本の感想で⇒3・11の未来――日本・SF・創造力 - 基本読書僕は「SFの役割に固執しすぎると本道を見誤るのではないか」と書いた。SFの役割? そんなものは読んだ人間が勝手に解釈すればいいだけの話だ。誰かがそれを決めるものではない。
付け加えて思ったことがあるとすれば、みんな自分が大好きで愛しているものについてはより壮大な力を持っていて欲しいと思うものなのだろう。親ばかみたいなものだ。SF好きの人達に感じる(まあ僕もそうなんだけど)ある種の気持ち悪さって、親近感からくる親ばかみたいなんじゃないかなあ。
あと311震災について、作家が語る責任と義務についての明快な答が『いま集合的無意識を、 』に書かれていたと僕は思う。これは大変よかったしそのとおりだと思ったので引用して終わりにしておく。もちろんこれはフィクションであり神林先生個人の意見と結びつけて考えるのはやめたほうがいいだろう。
「いいや。今回の震災に限らず、SF作家はどのような社会現象についても応答する責務など負っていない。語る能力のあるものは語ればいいのだし、応答するか否かは、各人の自由だろう。SF作家の責務はひとつだけだ。新しいSFを創ること、新作を書くこと、ただそれだけだ。」
いや、ほんとにそうだよね。僕が求めているのは震災について書かれた責務あるSFじゃないし、何らかの社会的意義を果たそうとするSFでもない。良質なSFだし、新しいSFだよ。SFはもっと自由になれる。
- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/03/09
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