僕は数学への憧れが強いようだ。数学本で面白そうなものがあると読めそうになくても買ってしまう。結局読めないでそのまま本棚に放置されることも多い。でも本書のように読めて、しかも数学への憧れを増長させるような優れた本があるから、学習しきれずに読み続けるのだろう。というわけで本書は僕の数学への憧れを増してくれる一冊だ。
しかしなぜ数学にこれ程憧れているんだろう。学究にも様々な道があるが、その中でも数学者はと飛び抜けて個性的で、しかもその殆どの場合誰よりも頭がよさそうに見えるし、場合によっては生きていることよりも数学をやっている方が楽しそうな人もいる。そのような人達を見るたびに僕も数学を学びたいと思うようになる。
また実際的な数学の意味合いとして学ぶことの意味は多きい。客観的な視点を保ち続けるというのは難しいことだが、数学はそれを他の手段よりかは可能としやすい。客観的とはようするに他者との合意が最大限得られることだが1+1=2と時間も言語も超えて誰もが合意し続けられるものさしが数学の最大の魅力だろう。
本書が目指したのはそういった1+1=2が我々の現実世界とどのような関わり合いにあるのかを出来るだけ幅広く説明することだろう。本書は100個の小論(1、2ページで終わる)から成り立っている。たとえば素数の年に一度地中から出てきて繁殖行為を行うセミはなぜそんなことをするんだろう? といった気になる疑問から、
電話越しにコインを投げてインチキを介在させない方法は? といった馬鹿馬鹿しいものまで多様である。なぜトラには縞模様があってダルメシアンには水玉模様があって象には模様がないのか? ホメロスが『オデュッセイア』を書かなかったと立証することは可能だろうか? 日常には数学が溢れている、と言いたくなるところだがちょっと違う。日常のどんな場面でも数学を適用させることが出来る。
数学は世界をはかるものさしなのだ。いくらでも自由に好きなものをはかっていい。そしてそれは証明さえされれば、誰もが同意してくれるだろう。僕もものさしに憧れ続けるのはやめて、自分でもものさしを手に入れることができるように動き出そう。いつだって遅いことなんてないんだから。

- 作者: クリスティアン・ヘッセ
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2012/03/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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