小説版めだかボックスを読みました。僕はめだかボックスのマンガがめっぽう好きで、単行本こそ買ってはいないものの毎回ジャンプで楽しく読んでいます。ただ両手をあげて絶賛するわけではなく、僕は西尾維新の書くバトルが胡散臭いし強さの序列が意味分かんないし決着の付け方も盛り上がらないから嫌いなんですが、マンガだとそこそこ読めます。
最初こそコマ割りが微妙でおまけに話もいまいち盛り上がらなかったのですけど(小説版を読むことによってなんとなくわかったけど)最近はコマ割りも惹きつけるしし(コマ割りに対して何の理論も持ってないので完全に主観ですけど)物語的にも吹っ切れたような感があります。やはりマンガというのは絵と、コマ割りと、そこに乗っかってくる物語のベクトルが完全に一致した時に最大限の効力を発揮するものであって、最初はその辺微妙だったものね。
と、小説版とはまったく関係がない話を続けてしまいましたけど、小説版はマンガ版の前日譚となっておりました。黒神めだかが生徒会長となってからがマンガの物語のスタートですが、小説ではいかにして黒神めだかが生徒会長になったか、というのが語られます。またマンガでは学園ものとしては不自然なほど先生が出て来ませんが、本書で主に焦点があたるのはその先生たちです。
そうか、やはりあの異常な学園なのですっかり忘れていたけど、やはり先生もいるのだなと今更ながら、当たり前のことに気づきましたけどこれが面白いですね。だいたいこの時点での黒神めだかといえば破綻はしているものの完璧超人であって、彼女を中心に据えた物語なんて何一つ面白くない。だって起伏もなく達成できてしまうんだから。
その点生徒会長になろうとする黒神めだかと接しなければならない四人の先生を物語的に配置したのは面白かったですね。彼ら彼女等はみんな黒神めだかに会うことによってあるものは対決しあるものは暗躍しあるものは言いなりにされて、みな「変えられて」いってしまうのですが、この動揺と変化と思想の対決がおもしろい。
バトルがないのも良かったですね。マンガとは対比した時の小説の良さというのはやはり声に出されない心情と思想が綿密に書ける点でしょう。「選挙前の根回し」という、言ってみれば一番交渉力と思想の押し付け合いが過激化する環境を設定したのが非常にうまいです。言葉によって対決、懐柔、あるいは説得されているのを読むのは、大げさに言えばドストエフスキーや笠井潔の感覚で楽しめて(ただ超ライトだけど)よかった。
特に最後の流れには感動したな。でもたぶん、こういう流れでマンガ版がスタートしてしまったばっかりに、初期のマンガは誰もが認める「微妙な」話になってしまったのではないかとも思うんですよね。ネタバレになるのでコレ以上は書きませんけど。でも、小説で読む限りは面白かったです。別にそんなに大きな事件が起きるわけでもないんですけどね。

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