基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

アニメもやっている古典部シリーズを読んだ

氷菓 愚者のエンドロール クドリャフカの順番 遠回りする雛 ふたりのきょりの概算と続く古典部シリーズを読みました。何年か前に氷菓を読んだときに、とてもつまらないと思ったのを覚えています。でも今こうして改めて読み返してみると、どれも良い作品たちでした。たしかに氷菓だけはなんだか今読んでもさまざまな面で微妙だなあ……とも思うんですけど、あとの四つはどれも甲乙つけがたく好きです。

あらすじとしては至極簡単で、省エネを信条とする主人公が、ひょんなことから古典部という誰も入っていなかった部活に入り、「わたし、気になります」が得意技のお嬢さんにせっつかれて頭を回転させて日常の謎を解決していく、人が死なないミステリ青春小説といったところでしょうか。

そう、最初に読んだときいらついたのはこの「省エネ」だったんですよね。。なんか気持ち悪い、と思ってしまった。僕自身かなりのめんどくさがり屋だったこともあって、同族嫌悪的なアレがあったような。それが今では結構上から目線で見られるようになりました。高2病だねえ、みたいな。

しかもこの主人公、省エネとかいいながら、かわいい女の子の前では思わずやってしまうので好感がもてます。あと省エネとかいいつつ、結構いろいろやっているんですよねえ。例外の方が多い規則ですよまったく。そういう成長、といえるかどうかはわからないので変化を書いてはいるんですが。

まあそういう上から視点で見ると、主人公のアレさも気にならない。ただのこじつけじゃないかと思って最初はどうにも受け付けなかった人が死なないミステリも、青春と合わさるとどうにも良い配分のように思えてくる。

男女計2人ずつの、恋を感じるような、感じないような、微妙な関係性。特にやることもない部活に集まって、ただひたすら日常の気になることを考えて考えて潰していく。いってみればありがちなラノベって感じですね。学園、部活、それからその作品に花を添えるのがミステリなのかSFなのかといった違いぐらい。特色といえば変に恋愛恋愛しておらず、終始淡々としているところでしょうか。

特別に、派手にラブがコメるわけでもない、落ち着いた関係が良い。構成は毎回凝っていてその辺もすばらしいと思うけれど、特に語れないので割愛。

いちおう、物語的な山場といえば、当初から目的にあった文化祭が開催されるクドリャフカの順番だと思います。そこから後はほとんど変わらなかった古典部の面々が、ゆるやかに関係性が変化していく様がみえて、とても楽しいです。

あと、読んでいるときに考えていた不満点みたいなものが、次の巻では修正されてくるのがちょっと面白かったです。たとえばクドリャフカの順番を読んだときに、構成から何まで、一個の完結したストーリーとしてとても面白かったです。

でもそこで不満が一個出てくる。シリーズとして続いているのにも関わらず主要メンバー4人が、ほとんど何も変化していないように見えたこと。恋愛をことさら押すわけでもないですけど、そういった関係性の深化もなければ、人間的な成長も感じられない。

せっかくのシリーズなのに、ちょっともったいないなと思ったところで次の『遠回りする雛』ではその変わらなかった関係性が少しずつ変わっていく様子が短編で書かれていて、とてもよかった。

そして『遠回りする雛』を読んだときに思ったのは、今度は学生生活、青春特有の閉じた世界でした。考えてみれば青春とはとても良いもののように語られますけど、超常現象抜きで物語的な進展といえば恋愛か部活か、開かれていく将来への夢か……

と非常に少ないパターンに収束してしまうものです。学校には行かなければいけないし、お金もないから実はやれることがとっても少なく、不自由なのが青春の一面でもある。でもそんな「制限された世界」だからこそ、その中である程度自分の裁量が利く恋愛や部活が光り輝いてみえるのかなとも思うなあと。

そんなことを考えていたら、『ふたりの距離の概算』ではさらに変化した各古典部の面々と、今度は2年目に進級したことでやってくる新入生の話が語られます。そこでのテーマは、やっぱり閉じられた世界ではない『外』だったのかなと。

じんわりじんわりとですが、その世界観を広げていくこの古典部シリーズ。派手ではなく、とても地味だけど心地よかったです。お勧め(氷菓だけで判断しないほうが良いと思う)

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

遠まわりする雛 (角川文庫)

遠まわりする雛 (角川文庫)

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

ふたりの距離の概算 (角川文庫)