AV女優かあ……実は僕はAVを買ったこともなければ借りたこともない。当然それ以外の様々な手段で見たことはある。が、お金を払って入手したことはそういえば一度もない。周りにもあまりいない、ような気がする。「お前AV買ったことある?」なんて聞くことはないから実際どの程度の割合なのかしらないけれど。
そんなAVが「今どんな状況なのか」というのが包括的にわかるのが本書『職業としてのAVが女優』だ。AV……まあ当然のことながら売れない。特に若年層は買わず、アダルトメディアの購入をする年齢層は40代50代に移ってしまっているそうだ(その結果、今やAV業界では熟女市場が拡大しているらしい)。
そしてAVが売れない、出せばほとんど赤字になってしまうような状況だとどうなるかといえば、必然的にクォリティは厳選されていく。過去には誰でもなれるはずだったAV女優という職業は、写真や面接などで片っ端からふるいに落とされてなんと志願者の14%しかAV女優としての道を歩き出すことは出来ない。しかもそのうちの半数は、事務所に所属しただけで仕事がほとんどこないAV女優だという。
また、かつては金の為に我慢して落ちていき、出来るだけ早く抜け出したい職業だったはずだが、今では楽しみながらやっていて、できるだけ長く続けたいという人が増えている。しかもお金だってあまりもらえない。通常ランクの女優では、AV出演一本数万円という報酬で、まじめにAV女優にいそしんでも普通に暮らしていくのが精一杯だ。
AV女優にもランクがあり、たとえば単体モデル(一人でAVの主役がはれる)では一本につき50万以上のお金がはいるのに対して、企画単体(SMなどの企画があるが、主役がはれる)になると10万から50万。企画(企画に対して複数の女優が出演する)になると3万円からといったように、厳密に区分けされているようだ。
明確なランク付けがされていることからも分かる通り、かつてのAVはギラギラとした業界人が作り上げる「作品」であったが、今はマーケティングを考え冷静に計算されたビジネスとしての「商品」であるという。その分撮影現場は安全に、ビジネスライクな世界になっていったが、商品になるということは「何かと交換できてしまう」ことを意識することだ、それは随分悲しいことである。
もっとも作品だったら良いのかといえば、そういうもんでもないが……。本書の「おわりに」では、職業は現実を知ってから選ぶべきという言葉があるが、まったくそのとおりである。まあ僕は単純にゴシップ的興味に誘われて読んだだけだが、職業として選んだ時の、AV女優についての詳細などは、今まであまり無かったのだから、希少価値がある(ただ読んでいる間、AV女優についての知識を蓄えている暇があったら他に何かするべきことがあるのではないかと悩んでしまったのも確かだ!)。

- 作者: 中村淳彦
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/05/30
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