基本読書

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考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

先日⇒古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)』 - 基本読書 この本について書いたけれど、せっかくだからオススメの文章本である『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』を紹介しようと思う。主にコンサルタントや、報告書のようなビジネス向けの文書を書く人に向けて書かれた本だけれども、「人に伝わりやすい文章を書く」為に必要な「構成」に注目した本としてこれ以上のものは読んだことがない。

最初に浮かぶ疑問はなぜ文章術で「構成」に注目しているのだろうか? 構成を変えるだけでよくなるのか? というところ。これに対して本書は、わかりにくい文章はこの世にたくさんある。書くこと自体に対する練習不足もあるだろうし、推敲不足もあるだろうし、読みにくい文体のせいでもあるかもしれない。一方でその実もっともポピュラーな原因はまさにこの「構成」にあり、またこの「構成」は一般法則があるが為に誰でも即座に気をつけて自分の文章に反映させることができるからだと述べる。

実際「構成」なんていってしまえば「どう並べるのか」だけともいえるので、気をつけたらすぐにできることばかりなんですよね。すぐにできるからといって効果が薄いかといえば、それでいて効果は抜群なので「もっと速攻で自分の文章を変えられる文章術」を読みたいといえば僕は真っ先にこの本を推します。

で、その実質的な「構成技術」が何かといえば、本書の副題にもなっている「ピラミッド原則」がそれにあたります。ピラミッド原則とは文章の並べ方の法則で、ピラミッドのイメージから読み取れるようにセンテンスが深くなるたびに広く、複雑化していくような書き方のことです。このやり方が一番「読み手の頭の中のプロセス」とぴったり合致するのです。

「伝えるべき文章」とは「読み手が知らないことを伝える」手段であって、その為のプロセスとはまず大きな考えを受け取って、そのあとに大きな考えを構成する小さな考えを受け取るという並べ方なのです。これは誰もが読み手なので実感しやすいでしょうけれども、自分の知らないことについて書かれた文章を読んで最初に感じるのはなぜ? 、つまり疑問です。

たとえば「豚は世界で一番素晴らしい動物だ」と主張する文章だけを読んだら「なぜ?」と思うでしょう。「なぜ?」とか「どうして?」のように疑問を覚える。そこに対して書き手は一段階下のレベルまで降りて「なぜならね、こういう理由なんだよ」と説明してあげる。それでもまだ理解できない「疑問」が出るようなら、そこでもまた下に降りていって「疑問」に答えてあげる。

これが読み手の頭の中のプロセスに沿って文章を並べていくという意味です。これを読んだ時は随分感動しましたよ。文章にも普遍的な法則が存在するんだなあ、よい文章ってのはあるんだなあと本書を読んでいた時に(今回この記事を書く為に読み返していた時にも)思いました。本当にエウレーカ! って感じだったもの。

もちろん本書の主張はこれだけではなく、たとえば文章に惹きつけるための導入部はどうしたらいいのか(読み手がすでに知っていることをストーリー風に語り、複雑化させ、疑問に繋げる)や問題を構造化して捉えるためにはどうしたらいいのかといったことが丁寧に語られていきます。

実を言えば特にこの「問題を構造化して捉える」というところに、仕事で僕は非常に恩恵を受けています。というのも考えてみれば仕事っていうのは「イレギュラーな事態にどう対応するのか」ってことなんですけど(イレギュラーなことが起こらなかったらシステムでいいから)つまるところ仕事とは日々起こる問題と付き合っていく事にほかならないんですよね。

で、問題を構造化して捉えるとどんないいことがあるかっていうと非常に単純で具体的なプロセスに問題を落としこむことによって考えるのが楽になるのです。たとえばシンプルにまとめてしまえば問題とは「望ましくない結果(売上が低下している)」を「望む結果(売上が伸びる)」に変えたいと思うことです。

この問題に対して、論理的に関連づけられた6つの質問群に回答していくのが、問題解決の第一歩になります。1.改善の機会がありそうか? 2.問題はどこにあるのか? 3.問題はなぜ存在するのか? 4.問題はに対し何ができるのか? 5.問題に対し何をすべきか? 最初の2つが問題の定義、3つめが分析の構造化、最後の2つが解決の発見に導くためのものになります。

本書ではコンサルタントを対象読者にしている為、上記の問題分析を通してどう文章に落としこみ、相手に伝えるのかを具体的にしていくのですけど、この考えが自分でできるようになってから不必要におろおろすることもなくなりました。問題を見つけてはメモ帳に書き出して問題の構造分析をしています。

とまあそんな感じで、文章にしろ、思考にしろ、ひとつの「技術」なので、知っておいたほうが得をするよと最後に書いておきます。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則