たいへん素晴らしいので面白い漫画を探している人間であれば迷わず読むべし。全て8ページで完結しているショートショートで、話に繋がりはほぼない。ニッケルオデオン 赤 というのが過去に出ているがこれとも繋がりはほぼないので、緑から読もうが赤から読もうがたいした違いはない。昨今の長編化して終わりがない漫画たちの中でこれだけ奇跡的にまとまったショートショートが読めるのは本当に幸運なことだ。
お話の傾向は奇想としか言い様がない部類であり、他に類がないセンスで話がつくられていく。いくつか紹介しよう。最初のショートショート『コロンバインで給食を』はどこかのアパートの2階の階段のとこに少女が脚立の上に立っている場面から始まる。ホームセンタで6時間も探したピッタリの脚立でこのうえに立つと彼女の立ち位置は2階と7分の3になる。
そして彼女はその階段の上から飛び降りて身体ごと地面にぶつかる。そして何度でも飛ぶ。消したい記憶を消すために。2階と7分の3は彼女が自身の嫌な記憶を消すために導き出した最適な高さの定理だった──。となんだか不思議なオープニングだ。だがこんなのはまだまだ序の口であり奇想天外な世界が此の後繰り広げられる。
魅力的なのは「そんなのどっから思いついたんだよ!」という着想の不可思議さから(少女の唾液がお酒になって少女たちが口移しで唾液を飲みまくる話がある。)、それをすっきり一遍の話にまとめあげる「省略の美学」。シンプルな状況設定とその中で繰り広げられる異常なキャラクタ同士のやりとり。
ひとことで表現するならば自由だ。
そしてとても言葉では言い表せぬ。
- 作者: 道満晴明
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/02/20
- メディア: コミック
- 購入: 8人 クリック: 18回
- この商品を含むブログ (34件) を見る