基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

Lean In: Women, Work, and the Will to Lead

FacebookのCCOであるシェリル・サンドバーグさんが書いた本がこの『Lean in』なのだが、いま英語圏で売れに売れまくっているらしい。ベストセラーリストみたいなところにずっといる。で、これが「売れてますよー」っていう一過性のブームというよりかは、Lean inが出たことによって女性の仕事環境についての注目につながって、議論になっているような状況。まあサッチャーがちょうどお亡くなりになられたことも手伝っているのかもしれないが。

このLean in、読めばすぐわかるけれど自伝的な要素もあり、Googleでの職場経験やFacebookでの職場経験といった面白い話も勿論あるんだけど、それより「女性が社会に出て働くとはどういうことなのか」ってことがメインで書かれている。今日では女性差別は過去に比べると随分良くなったけれど、今でも男女間の仕事環境における格差ってのは厳然としてあるわけで、彼女はそんな中でハイパー大企業の中枢を占めているわけだけど、その自分自身の経験と、他多くの女性の話が出てくる。

たとえば子どもの授業参観にいったら、お父さんは仕事にいっています。お母さんは仕事に行ってわたしのことをなんにも見てくれません、と子どもが学校で言った、などというなかなかショッキングな話もあったりする。ようは子どもの時点で「母親は働いてばっかりいないで子どもの面倒を見る役割である」という固定観念が形成されているってことだからだ。そして当然ながらそれは大人の社会になっても変わらなくて、女性が働いているというだけで嫌悪感や無根拠な批判にさらされたりする。

子どもが産まれた時に男性にたいしては「おめでとう!」と言葉が投げかけられるだけだが、その時女性は「おめでとう! で、仕事はどうするの?」と問いかけられる。性別の差が付いている時点で、そうした差ははっきり出てしまう。本書で面白かった比喩が、男と女のランナーがマラソンをしているとして、二人は同時にスタートをきるのだが男には「がんばれー!」という応援だけがきて、女性には「なんでそんなことしてるの?」という疑問が投げかけられる。

スタートアップの企業でもはじめるのは95%が男で、女性のTOPはそれだけで珍しい存在になってしまう。それは出産が大変だということもあるし、子どものころから「子どもの面倒を見る役割である」と観念づけがされていることもあるし、それからくる本人の思い込みで行動を起こさなかったりする。ワークライフバランスと簡単に世の中ではいわれるけれど、実際働きながら子どもを産んで育てるってのは、バランスなんかとれるもんじゃない。

たとえば今日大事な会議があるから出張しなければいけない、しかし子どもが熱をだしてしまった、誰も病院に連れて行ってくれる人が居ないとなったら何かを諦めなければ不可能なのだ。常にそうした取捨選択をして、どこかを妥協するほかない。完璧な行動なんてとれるわけがないのだから。

これが単なるフェミニストの扇動本かといえばそういうわけでもなく、たとえばサンドバーグ講演で、最後に質疑応答の時間をとっても女性からの質問がまったくでないで、男性からの質問ばっかりだった、というような例をいくつかあげて、「女性自身が意識を変えることも必要である」と鼓舞している。まあ、それはそうだよね。

Transcript and Video of Speech by Sheryl Sandberg, Chief Operating Officer, Facebook | Barnard College ⇐ここではBarnad Collegeでの講演が見れるし読めるけれど、これを読むと雰囲気がつかめると思う。ここからあなたの大人としての人生がはじまる。女性は自分の可能性を信じ、手をあげていかなければいけないのだと発破をかけていく。

You’re going to walk off this stage today and you’re going to start your adult life. Start out by aiming high. Like everyone here, I have great hopes for the members of this graduating class. I hope you find true meaning, contentment and passion in your life. I hope that you navigate the hard times and you come out with greater strength and resolve. I hope that whatever balance you seek, you find it with your eyes wide open. And I hope that you—yes, you—each and every one of you have the ambition to run the world, because this world needs you to run it. Women all around the world are counting on you. I’m counting on you.

What would you do if you weren't afraid? は恐れることをやめた時に、何をするだろうかぐらいのニュアンスだと思うけれどけっこう女性にもキツイことをいっているんだよね。もちろん女性だけが大変なわけではなく、男性は「稼がなくてはいけない」というこれまた固定観念のなかにいるわけで、むしろこっちのほうが悲惨かもしれないわけだけど。女性に限った話ではなく、男性の側でも考えるところの多い本だと思う。一筋縄ではいかない問題だが、なんとかしていかなければいけないだろう。

けっこう赤裸々に自身のことも語られていて、大変だなあと思うエピソードやうまいなあと思うエピソードがある。Facebookに着任した時にネットで写真を好き勝手にいじられてけなされたり、これでFacebookは永遠に混乱したままだろうということをいったりして眠れなくなったりしたそうだ。ネットの誹謗中傷はどこにいっても変わらない。匿名を排除したらどうなるのかわからないけど。

日本語訳もそのうち出るようなので、日本語でも英語でも読んでみるといろいろ考えることが会って楽しいと思うのです。しかし真面目な話、制度や周囲の環境構築でなんとかできるぶぶんと(子育てなんて本来夫婦ふたりが働きながらじゃとても無理でしょ。しかも兄弟なんて。)、個人の意識の改革ととあるので、そこらはきっちり詰めていくほかないだろうな。というわけで類書も下においといたからヒマだったら読もう(自分が)。

Lean In: Women, Work, and the Will to Lead

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