『ウイルス・プラネット (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)』は、ウイルスの世界について書かれた、エッセイ集のようなもの。ウイルスというのは奥が深い。生物なのか無生物なのか未だに議論が続いている存在であり、人間にとって風邪やインフルエンザ、HIVのように致命傷を与えるかと思えば、比較的軽いウイルス感染症であれば成人後に免疫疾患にかかりにくくなったりなどという効果もある。
細菌を食べ病気を治療してくれるウイルスもいれば、そもそも何百万年という歳月の間に、人間のゲノムはウイルスの残骸から膨大なDNAをとりこんで、つまりはかつてウイルスだったものを大量に含んだ形で今の人間が存在しているという事実も有る。たとえば受精卵が成長して胎児になるとき、胎盤が形成されるが、この胎盤の外層と内側の細胞融合にウイルスの遺伝子が重要な役割を果たしているという話もある。
ウイルスの語源であるラテン語には、「蛇の毒液」と「人間の精液」という、破壊と創造二つの意味があったらしいが──、ウイルスが人間にたいして果たしてきた役割やら、猛威やらを考えるととても的を射ている命名であるといえる。あっという間に広がって、あっという間に進化して、多種多様な状況に適応し人から鳥、それに海と場所も環境も選ばず生き残っていく──なんとも破天荒な存在で、その歴史をおっていくのはとても楽しい。
200ページ足らずの短い本で、1TOPICも短いけれども、とてもよくまとまっており200ページの本を読んだとは思えないような満足感が味わえるだろう。そしてもっとウイルスについて知りたいと思うようになるに違いない(僕がそうだからだが。)他には風邪の科学とかがオススメ。
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