基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

人間ってそんなものね

考えてるつもりという本を読む。

影響力の武器などは古典的名著だが、最近だとダニエル・カーネマンのファスト&スローや、『すべては先送りでうまくいく』やら『正直シグナル』とか、にたよ〜なテーマの本が昔から今に至るまで延々と出続けているよなあという印象。こりずにそんな本ばかり僕も読んでいて自己責任なところもあるのだが。日本で言う自己啓発書みたいな。行動経済学というか、心理学というかしゃかいがくというか。この手の本は読みすぎて何が自分以外の人にとって目新しい情報で、何は皆知っているのかよくわからなくなってくる。

でも重要な話ではあって。要はどの本も言っているのは「人間は理性もあるが、常に理性を発揮しているわけではなく、単純な条件反射や直感や思い込みで状況を判断することが多く、それは理性的な判断ではないから気をつけるか利用するべし」といったことが延々と繰り返し、事例を変えつつ語られるわけだ。たとえば自分と同じ仕草、ファッションをしている人、言葉を繰り返す人に誰しもが好意をいだきやすいとか、自分以外の人達がいると責任が分散してしまって誰も困っている人を助けなくなるとか、明らかに間違っている意見でも自分以外の人達がみんなその意見を支持していたらそれを流れで支持してしまうとか。

こうした本を読むことの利点は、「あ〜人間なんてしょせんその程度のものね〜」という諦観がうまれるところで、たぶん他人にたいして怒らなくなると思う。どんなに馬鹿、あるいはひどい人間にみえたとしても、たいていはその人自身に問題があるというよりかはその状況やら、ネットだとそもそもの構造自体に問題があると考えるようになる。

ついでにいえば自分にも寛容になるだろう。簡単な操作、状況次第で人間なんて醜くもなれば親切な人間にもなる。会社に遅刻しそうだとなれば道端で苦しんで倒れ込んでいる人がいても無視するかもしれない。周りに人がいっぱいいたらその人達がなんとかしてくれるだろうと考えて行っちゃうかもしれない。逆に言えば、時間さえあって周りに人さえいなければ助ける可能性はかなり上がる。

ブログやTwitterで罵詈雑言を投げかけてくる人間だって、対面になればほとんどの場合は和やかに挨拶をかわし「いやどうもすいませんね」などといいながら会話をすることができるだろう。だから僕はネット上の罵詈雑言といったものは基本的に無視というか、そのひとにたいしてなんの感慨も持たないことにしている。時と場所が違えば仲良く慣れたかどうかは別として、普通に接することの出来る人達なのだと。

そういう意味でいえば、ネットをやるやらないに関わらず上記にあげたような本は、少なくとも一冊は必読だと思うんだよね。人間が一体どの程度制限がかかった存在なのかってことを意識するために。とかく僕がネットやら人のやりとりをみていて思うのは、「なにをそんなに人に期待してるんだろう」ってこと。そんなに人間って上等で理性的なもんじゃないでしょ。一方で「人間ってそんなに上等でも理性的でもないよな」という認識止まりだとそれ以上にはいけないというのも、上記にあげた本に記されている実験からは読み取れるんだけど。

「人間の知性には変わる」「人間の知性は変わらない」の二つでアンケートをとると、あたりまえかもしれないが前者の人間は補習やセミナーなどの出席率が高いが後者は著しく低い。『そんなに人間って上等で理性的なもんじゃないでしょ』という認識は重要だと思うけれど、かといって「だから人間なんてどうしようもないし無理して理性的にふるまうひつようなんてない」と世紀末感を丸出しにしてレイプなどに励んでもしょうがないといった話。

まあ、バランスだよなあ。

考えてるつもり ――「状況」に流されまくる人たちの心理学

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影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

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ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?

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ファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか?

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