基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

臆病者のための株入門 (文春新書) by 橘玲

Kindle版になっていたので再読。これは昔読んだ時も思ったけど良い本。自分が就職できなかった時のパターンとしてどうやって生きていこうか……と考えていた時に、物価の安い国にいってネットだけ繋げてデイ・トレーダかアフィリエイターになって遊んで暮らそうという夢みたいなことをパターンの一つとして思い描いていて、株の勉強をはじめていたのだった。ちなみにこの本を読んだり他の本を20冊ぐらい読んだ結果「これはムリだな」と思ってやめたのだった。

だからといってこの本がダメな本なわけではない。むしろその時読んだ20冊ぐらいの中ではいちばん良い本だった。株式と聞くと難しいイメージがあるが、原理原則からいえば安く買って高く売れば儲かるというだけの話。もちろんそれでなんとかして達成しようと思えば達成手段はいくつも枝分かれしていき、そこでようやく株は「儲けるのが」難しいのだと気がつく。

ただしそうしたゲームを支配しているのはシンプルな原理原則である。さきの話を推し進めるとこうなる。①株式投資は確率のゲームである。②株式市場はおおむね効率的だが、わずかな歪みが生じていて投資家はそこを狙う。③資本主義は長期的には市場は拡大し、株価も上昇する(100年後かもしれないし200年後かもしれないが)

そうすると勝つ方法としては市場の歪みを利用するか、長期的にスタンバって上がるのを待つかの二択になる。この二択にたいしてどのようにアプローチするかが人によって異なってくる処なのだが……という話をようは本書では延々としている(新書だからすぐに読み終わるけど)。

株なんてものはやらないと損なんてものでもないし、生きていくための必須知識なわけでもない。だけど何かに投資して、それが大きな利益になって返ってくるのを待つ、というのは基本的に誰もが人生でやっていることだし(勉強だってまさに時間の投資だ。)、そもそも自分の資産を守らなければならないとなった時にこうした知識がないとどうやって立ち向かっていったらいいのかわからないだろう。

もっとも資産を守ろうと思ったら本書だけでは足りないのだが。著者の本で『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』もKindleで出ていたから読んだけど、これは日本の将来の3つのシナリオ(楽観、悲観、破滅)を考えて楽観と悲観、それから破滅の第一ステージまでは「普通預金こそが最強の資産運用」といってのける。

なかなか説得力があるんだけど橘玲さんは本ごとに言っていることが極端なのでいっけん理屈があっていてもへ〜面白いね、ぐらいに留めてとり得るパターンの一つぐらいの認識の方がいい。たとえば国家が破綻した時に最もダメージがでかい資産って何かって言ったら「自分自身」なんだけど(たとえば明日国家が破綻して会社がばたばた潰れたら働く場所がなくなってしまう)その対策はほぼないし。

また著書のうち半分ぐらいの本は僕はとてもひどい内容だと思っているので(インチキ臭かったり、無意味だったり)、他の本に手をだす場合は注意。訳書だとウォルター・ブロック「不道徳な経済学」が良いしまとめ的な内容だと『大震災の後で人生について語るということ』なんかはリスク分散についてためになる内容。

臆病者のための株入門

臆病者のための株入門