基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

1万円起業 片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法 by クリス・ギレボー

この手の本(事故啓発的ソフトカバー本)はあまり読まないんだけど、なかなか愉快なタイトルじゃないかと思って手に取る。貯金も、会社をやめる必要も、リスクを取る必要もなく、ごく少数の人間だけで運営し、お手軽に1万円から事業を始めて、それでお金を儲けちゃおうというシンプルな本。「そんなことができれば確かに素晴らしいなあ」てなところがこんなものに興味を持つ人の考えだろう。

どんなふうに話を展開していくのかと思えば、既に1万円起業のやり方で成功している人たちを見つけて(著者自身もそうだが)、彼ら彼女らのやり方の中に成功のパターンを見つけ出そうというものだ。最終的に1500人を超える起業家(どれもこじんまりとしたスタートを切った)にアンケート調査を実施している。

たとえば会社を首になった男が、家具屋の友人がマットレスが余りまくって困っているというのでそれを引き取る。そして閉店したばかりの自動車ディーラに場所を貸り、マットレスをネットの告知と口コミだけで売り始めた話(元手ほぼゼロ)。他には毛糸店を立ち上げた話や、外国語の短期間学習法をおしえたりといった形の、元手ゼロ、店なしので起業に成功した人たちがわんさか紹介される。

本書はそこそこ具体的に起業の立ち上げ、軌道への乗せ方、継続のさせ方、その後の不安とカバーしてくれる。ただし当たり前の話だがどのビジネスにもそれぞれのやり方があるので成功例を1500も集めてそこから良さげな手法を集約しました〜なんていうのはうのみにすると危険ではある。「正しいやり方で努力せよ」みたいな「んなこたあわかってんだよ、問題はそれをどうやってやりゃいいんだよ」という話もある。

枝葉の部分は読むしかないが、抽象化して「金儲け」の幹の部分について言えば、金を儲けるには「相手の欲しがっているものを」「自分が与えてやって」「そこから金を得る」の3つに集中して実行すればいい。本書が1500人以上のマイクロ起業家にアンケートをとって言っていることを簡単にまとめてしまえば「相手が欲しがっていて、自分が提供できるものを考えて、そこから金を得よう」というだけの話なのだ。

(情熱+スキル)×(問題+市場)=ビジネスの機会

そうか、じゃあ趣味で起業しよう! と思ってもそうそううまくはいかない。たとえば僕だとこのブログからお金を得ようと思っても難しい。書評ブログ(自分のブログは読書日記だと思っているけど)なんて山ほどあるし、そもそも本を読む人自体があんまり多くないんだから、情熱と凡百のスキルがいくらあろうが、問題もなければ市場もない、残念ながらビジネスの機会的には難しいと言う他ない。

でもたとえば書評を書きたいと思っている人に向けて「書評で儲けるテクニック教えます」と「書評を書きたい人向け」にするとか(余談だがこういう「他のバカどもを騙して金を稼ぐぜガハハ」みたいなことを考えているバカは騙されやすい。)、あるいは読んだ本を「書評」するのではなくさも自分がそもそも最初から考えていました〜みたいにちょっと表現を変えて「特定の領域に関するエッセイスト」みたいな感じにすれば想定ニーズは増えるだろう。

と、そうはいってもそうそううまくいかないよね。自分の持っているスキルが即座に金に直結するかどうかなんてわからないし。だいいちサラリーマンってのは至極地道に金が入ってくるんだから素晴らしい仕組みじゃないか。でも本書のような考え方は今後重要になってくるだろう。「大衆」と十把一絡げに大勢の人間を呼べるような時代じゃなく、みんなそれぞれマイナな領域に走っていっているのだから、当然仕事の単位も今後どんどん小さくなっていく。

本書はその他にも細かい情報が揃っていて(起業家が恐れていることは? というアンケートへの答えとかけっこうおもしろかった)、この手の胡散臭い事故啓発的ソフトカバー本(科学的な根拠もなく思い込みだけで教訓を羅列するクズ本の総称)としては、わりとおもしろいほうだ。

1万円起業 片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法

1万円起業 片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法