世の中にはタイトルを見ただけで中身の大半を想像できてしまう本があって、これもその類である。タイトルをみただけで「あ。自分で書けそうだな」と思ってしまったし、中身もその程度のものでしかない。通勤なんてバカバカしい、オフィスにいるとわずらわしいこと(ミーティングとか、緊急性のない質問とか)に邪魔されて、自分の仕事ができないか中断されてしまう。そのあたり、リモートワークにすれば自分で働く時間を選べるし通勤はなくなるし好きな場所にいけるしでいいことずくめだよね、と。
もちろん世の中にはリモートワークが不可能な職もある。が、よくよく考えてみると「一箇所に集まる必要のある作業などというものはあまりない」ということに気がつくだろう。メールを送るのはいわずもがな、コミュニケーションも別に対面でなくても構わない。実際僕も近いうちに退職して在宅で仕事ができるように職を移すことが決定しているので、その辺のメリットとデメリットについてはよおく考えたものだ。たとえば「通勤しなくていいとなったら、いくら金を払ってもいいだろうかな?」とか。15万払っても惜しくはない。
ドイツの平均通勤時間である23分にたいしてのストレスの対価としていくらがふさわしいとかんがえるか、という経済学者の調査では19%もの賃上げがなければ満足できないという結果が出たそうだ。片道1時間以上かけて人間の海に飲まれながら通勤している身からすれば23分程度で何を言ってやがると思うわけだが、それぐらい通勤はつらい。しかも『幸福の計算式』によれば、そのつらさは慣れて減少するのではなく、ずっとつらいままだ。
本書が提案するのは個人がどうこうする話というよりかは、組織としてもっとリモートワークを普及させていこうぜ、メリットがいっぱいあるぜという話。著者らの会社ではリモートワークは実にうまくいっているようだが、本書では、この組織としてのリモートワークには成功例は断片的で、具体例のほとんどは自分たちの例だけなので説得力がない。リモートワークは素晴らしいという結論ありきの論が大半で、極論もある。
「部下を見張っていなけりゃいけないとしたら上司はマネジメントを失敗しているのだ」みたいな。まあそりゃそうかもしれないけど、だからといって完全なマネジメントを達成し続けられるかっていったら無理なわけで、リモートワークに必須な自発的にコミットしてくれる能力のある従業員がそうやすやすと集まるかといえば、質の問題で大半に普及させるのは無理なような気もする。一箇所に集めるのはそれはそれで効率のいい側面があるし、もっと広範で数値的な検証が必要だと思う。
Kindle版も出ていることだし、ぱらぱらと適当に30分ぐらいで読めばいいんじゃないでしょうか。今までオフィスに通勤しないで生活をするなんて考えたこともないほど、衝撃は大きく何かを変えるきっかけになるかもしれない。
強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」
- 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,高橋璃子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/01/24
- メディア: 単行本
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